『アイノカタチ』- 孤独だった私に手を差し伸べてくれた人がいた。 それぞれの思い出を抱えて私は生きてゆく ~♡

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148  ――― 芽衣は引っ越して10日後に宿から完全撤退した ――――    薫くんが荷物持ちしてくれたから、ほんとめちゃくちゃラクチンな 移動で済んだ。  男の子は力があるからほんとっ、頼りになる。  宿で昼食を摂ってからふたり我が家に向かった。             ◇ ◇ ◇ ◇  「お疲れ様……薫くんがいてくれて助かったわ」  「芽衣さんもお疲れ様」  しばらく手持ち無沙汰にしていた薫くんが……  「じゃあ、俺はこれで帰ります」と言った。  「あっ、待って、今日は本当の引っ越し日だから引っ越し蕎麦 食べないと。ひとりじゃ寂しいから一緒に食べってって、お願い」  前の日に食料の買い出しは済ませてあったから、おいしい お蕎麦作るわよぉ~。  「じゃあ、夕方までいます。  何か用事があったら言ってください」  「よぉ~し。  夕飯は頑張るからねン。  疲れたから少し横にならない?  わたしは畳で大の字になってお昼寝するから薫くんソファーベッドで 横になったらいいわよ。  寝ないならテレビ見ててくれいもいいし、ボリュームは 小さくしといてね」  「了解っす!」  私は薫くんにタオルケットと枕を手渡し、自分もタオルケットを被り 真新しい畳の上に寝っ転がった。  明日からこの我が家での暮らしが始まるのだと実感しつつ 夢の世界へと駆け抜けていった。  薫くんがつけてるテレビ音を微かに聞きながら。           ◇ ◇ ◇ ◇    本当に疲れてたんだな、芽衣さん。よく寝てる。  ここに着いたのが確か3時過ぎで、もうすぐ6時になろうとしていた。  まだ外は明るいけれど、後1時間もすれば暗くなり始めるだろう。  今起こすべきか、起こさないべきか……俺は悩んだ。  気持ち良さそうに寝ている可愛い人を起こすのが忍びなくて。   70
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