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――― 芽衣は引っ越して10日後に宿から完全撤退した ――――
薫くんが荷物持ちしてくれたから、ほんとめちゃくちゃラクチンな
移動で済んだ。
男の子は力があるからほんとっ、頼りになる。
宿で昼食を摂ってからふたり我が家に向かった。
◇ ◇ ◇ ◇
「お疲れ様……薫くんがいてくれて助かったわ」
「芽衣さんもお疲れ様」
しばらく手持ち無沙汰にしていた薫くんが……
「じゃあ、俺はこれで帰ります」と言った。
「あっ、待って、今日は本当の引っ越し日だから引っ越し蕎麦
食べないと。ひとりじゃ寂しいから一緒に食べってって、お願い」
前の日に食料の買い出しは済ませてあったから、おいしい
お蕎麦作るわよぉ~。
「じゃあ、夕方までいます。
何か用事があったら言ってください」
「よぉ~し。
夕飯は頑張るからねン。
疲れたから少し横にならない?
わたしは畳で大の字になってお昼寝するから薫くんソファーベッドで
横になったらいいわよ。
寝ないならテレビ見ててくれいもいいし、ボリュームは
小さくしといてね」
「了解っす!」
私は薫くんにタオルケットと枕を手渡し、自分もタオルケットを被り
真新しい畳の上に寝っ転がった。
明日からこの我が家での暮らしが始まるのだと実感しつつ
夢の世界へと駆け抜けていった。
薫くんがつけてるテレビ音を微かに聞きながら。
◇ ◇ ◇ ◇
本当に疲れてたんだな、芽衣さん。よく寝てる。
ここに着いたのが確か3時過ぎで、もうすぐ6時になろうとしていた。
まだ外は明るいけれど、後1時間もすれば暗くなり始めるだろう。
今起こすべきか、起こさないべきか……俺は悩んだ。
気持ち良さそうに寝ている可愛い人を起こすのが忍びなくて。
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