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街木歩は志摩へ行き、芽衣の暮らす一軒家に出向き、芽衣との再会を
夢見ていたが、ヒョロっとした長身の少年とふたり何やら仲睦まじくしてる
場面に遭遇し、思わず腰が引けてしまい、芽衣に会わずにスタコラさっさと
自宅に舞い戻ってしまった。
そんなこんなでいろいろと歩が自己嫌悪に陥り後悔に苛まれて
日々を過ごしていた頃のこと・・。―――――
◇ ◇ ◇ ◇
俺、何やってんだろうなぁ。
肝心なところで臆病風吹かせて情けないったらありゃしない。
自分がくだらない浮気もどきのことをしているもんだから
彼らのこともすぐに男と女の間柄かも、なんていう考えにいくのだ、きっと。
もし自分に真理子との過去がなかったら、なかった頃の俺なら
芽衣とあの少年のあの構図に出くわしたとしても、すぐにキスして
いるんじゃないかなんて、思わなかったかもしれない。
例えば、親の財布からただの一度も金を抜いたことのない人間が
我が子が自分の財布から金を盗むなんて努々考えたことも
ないように!
親の財布から金を盗ったことのある人間は、我が子を自分の財布に
近づけないようにしておくことだろう。
悪い考えを持たないよう配慮するのだ。
自分が誘惑に負けたように子が誘惑と戦わずに済むように!
例えば、外で散々女遊びの限りをつくしている男は、自分の妻と年頃の娘
には異常に厳しく外出時間などを制限すると聞く。
何故なら、彼は自分のような男が夜の街には大勢いることを
知っているからだ。
人間というものは、まず自分の経験で物事を推し量る傾向に
あるんだろうなぁ~。
「はぁ~」
昼食の時間になり、周りにはほとんど人がいないのをいいことに
そこそこ広さのある、どの机もそこそこ整理整頓されている職場で
歩は盛大にため息をついた。
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