♡:。.孤独だった私に手を差し伸べてくれた人がいた。―― それぞれの思い出を抱えて私は生きてゆく ――。:♡『アイノカタチ』はいろいろ♡-23-

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223 ―――――  街木歩は志摩へ行き、芽衣の暮らす一軒家に出向き、芽衣との再会を 夢見ていたが、ヒョロっとした長身の少年とふたり何やら仲睦まじくしてる 場面に遭遇し、思わず腰が引けてしまい、芽衣に会わずにスタコラさっさと 自宅に舞い戻ってしまった。  そんなこんなでいろいろと歩が自己嫌悪に陥り後悔に(さいな)まれて 日々を過ごしていた頃のこと・・。―――――                                    ◇ ◇ ◇ ◇  俺、何やってんだろうなぁ。  肝心なところで臆病風吹かせて情けないったらありゃしない。  自分がくだらない浮気もどきのことをしているもんだから 彼らのこともすぐに男と女の間柄かも、なんていう考えにいくのだ、きっと。  もし自分に真理子との過去がなかったら、なかった頃の俺なら 芽衣とあの少年のあの構図に出くわしたとしても、すぐにキスして いるんじゃないかなんて、思わなかったかもしれない。  例えば、親の財布からただの一度も金を抜いたことのない人間が 我が子が自分の財布から金を盗むなんて努々(ゆめゆめ)考えたことも ないように!  親の財布から金を盗ったことのある人間は、我が子を自分の財布に 近づけないようにしておくことだろう。  悪い考えを持たないよう配慮するのだ。  自分が誘惑に負けたように子が誘惑と戦わずに済むように!  例えば、外で散々女遊びの限りをつくしている男は、自分の妻と年頃の娘 には異常に厳しく外出時間などを制限すると聞く。  何故なら、彼は自分のような男が夜の街には大勢いることを 知っているからだ。  人間というものは、まず自分の経験で物事を推し量る傾向に あるんだろうなぁ~。  「はぁ~」    昼食の時間になり、周りにはほとんど人がいないのをいいことに  そこそこ広さのある、どの机もそこそこ整理整頓されている職場で 歩は盛大にため息をついた。     114
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