『アイノカタチ』- 孤独だった私に手を差し伸べてくれた人がいた。 それぞれの思い出を抱えて私は生きてゆく ~♡

244/379
前へ
/379ページ
次へ
244  この旅館では一見(いちげん)さんも泊まり客も、食堂で 飲食できる場所が整えられていた。  俺と百瀬は旅館の飲食コーナーに入るとすぐに視界に飛び込んできた 眼前の四人掛けのテーブルにさっと座り込んだ。  俺たちの行動はしごくスムースだった。  席を決めるのに言葉は必要なく、吸い寄せられるように 側にいる人と息を合わせるかのように同じテーブルを目指した。  「疲れただろう? こんな遠い所まで付き合わせて申し訳ない」  「それは言いっこなし、なし。   私、なんとなく街木くんの奥さんに興味があって…… あったからここに来ようって思ったんだし。  くだらない好奇心かもしれないけど、ちゃんと理由があって来てる訳で だからほんと気にしないで」  私は旅館の奥を背に、街木くんは戸口を背に座っている。  そして私の話を聞きながらも街木くんは奥を気にしていた。  芽衣さんの姿を探しているのだろう。 125
/379ページ

最初のコメントを投稿しよう!

116人が本棚に入れています
本棚に追加