『アイノカタチ』- 孤独だった私に手を差し伸べてくれた人がいた。 それぞれの思い出を抱えて私は生きてゆく ~♡

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353  歩のことは恨んでない。  恨んで家を出たわけではなくて、歩の恋愛の邪魔をしたくなくて 家を出たと奈々に語る。  本気なら、相手の女性と幸せになってもらいたくて、家を出たのだと。  話せば長くなり、今は詳細を語れないけれども、いろいろあって 薫をひとりにはできない自分がいる。  だから歩の元には帰れない。  本当に遥々迎えに来てくれた歩に申し訳ない。  奈々さん縁あるならば、ご迷惑でなければ、歩をお願いしたい。  そう、芽衣は奈々に歩のことを託した。           ◇ ◇ ◇ ◇  私は芽衣さんの話を聞いていて、想像していた以上の素敵な女性だな って思った。  街木くんが芽衣さんに惚れるのも改めて納得できた。  私はひとつだけ、お聞きしておきたいことがありますと 芽衣さんに言った。 「例えば……例えばですが、辰木さんのようにある日、薫くんがこの世から あるいは何かの事情で薫くんが芽衣さんの前から居なくなる日が来ても 街木くんのところへは戻らないのでしょうか? 」  思わぬ質問に目を見開く芽衣。 「はい、どんな理由があるにせよ私は今薫くんを選びました。  帰れる資格はすでにありませんから」  そうきっぱりと芽衣は答えた。 187
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