『アイノカタチ』- 孤独だった私に手を差し伸べてくれた人がいた。 それぞれの思い出を抱えて私は生きてゆく ~♡

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356  こんな日が来るって一応の心積もりはしていたけど、案外 早かったことに万寿は内心複雑であった。  芽衣ちゃんはちっとも悪くないって分かってる。  息子がいないのに、その母親と暮らすお嫁さんなんてあんまり 聞いたことないもの。  人それぞれではあるけれど、いたとしても少数だろうね。  それに芽衣ちゃんは若い。  再婚だってあるかもしれない。  わたしみたいな婆婆が付いてちゃあ、寄ってくる者も寄ってきやしない じゃないか、ねぇ?  こんな風に考えていたので万寿は芽衣を引き留めたりはしなかった。  ただ、いきなりひとり息子を亡くした万寿にとって芽衣や孫の真由まで 居なくなってしまうなんて、更なる寂しさが身に染みるのだった。 「ふふっ、ははっ、ねえ剛、だけどあれだね、やっぱり芽衣ちゃんは やさしい子だね。 49日が過ぎたらお暇します、じゃなくて49日までここに置いてください っていうんだもの。  剛、もう、あんたったらぁなんで死んじゃったんだよ。ばかっ! 」  芽衣が買い出しに出かけた後、万寿はひとり和室に備えた仏壇の前で 亡き息子に話しかけたのだった。       188-2
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