『アイノカタチ』- 孤独だった私に手を差し伸べてくれた人がいた。 それぞれの思い出を抱えて私は生きてゆく ~♡

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357  寂しい気持ちを振り払うように万寿は葬儀でも会った妹に 会いに行った。  そこで芽衣が出ていくことも話をした。  結構な額の保険金が下りたことは、話さなかった。  理由は、ただ聞かれなかったからだ。  芽衣も受取人の一人だったこともあり、芽衣が書類作成やら担当者との やり取りやら、フォローしてくれて苦労することなく万寿は保険金を 手にしていた。  こういう時、大抵は嫁が受取人になっていて、姑が嫁に自分にも 渡さんかいっ、て罵る話を聞いたことがあるが、賢い息子はそんなことに ならないよう、二人が受け取れるようにしていた。  真由がいる分、息子は芽衣ちゃんに少し多く渡るように契約していた。  私は剛のしてくれたことに不足はない。  家もあり、年金だけでも十分贅沢しなけりゃ、やっていけるけど 働けない年寄りには、余分な資産は心丈夫だからね。  その日は普通に妹と話しをして帰ったンだけど……それからが 何となくおかしい。何って妹の様子が。  余所余所しくなった。  あんなにしょっちゅう泊まりに来いと言ってた妹が剛を亡くして 芽衣ちゃんも出ていくって話をして、私が独りぼっちになりそうだと 知ると、途端によそよそしいったら。何なの全く。  心のどこかでは最悪、困った時は頼れる妹がいるって心の拠り所に してたのに。   姉妹なんて所詮他人だねっ、はっ!           ◇ ◇ ◇ ◇  カラ元気を装って暮らしている万寿だったが、芽衣が出て行ってしまう 49日が近づくと以前よりもよけいに寂しく感じるのだった。  何度か『ずっとここにいればいいじゃないか』と言い出しそうになった。  けれど、もしも断られたら、迷惑だったらと考えると、とても 言い出せなかった万寿である。  
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