『アイノカタチ』- 孤独だった私に手を差し伸べてくれた人がいた。 それぞれの思い出を抱えて私は生きてゆく ~♡

358/379
前へ
/379ページ
次へ
358  あれから、芽衣の様子を伺うけれど、以前の芽衣とちっとも 変わらなかった。  去るからと言って他人行儀でもなく、今まで通りやさしく接してくれる 良い嫁だ。  芽衣がこの家を出ていく日、自分は気持ち良く見送れるだろうか、 そんなことを考え始めると万寿は鬱になりそうだった。  妹に余所余所しくされたことで寂しさが倍増してしまったのだ。  信じていた者の裏切り、これはものすごい心理的プレッシャーを 万寿に与えた。  毎夜毎夜、訪れるこれは孤独と言う名の寂しさに押し潰されそう だった。  そんな夜を10回程重ねた頃、芽衣がおそるおそる自分に聞いてきた。  「万寿さん、この家を出た後も、真由を連れて万寿さんの顔を見に 来てもいいですか?  毎日だとご迷惑なら、週に2・3回。  家はこの家から近い場所で借りようと思ってるんです」 えっ!  「もちろんよ、芽衣ちゃん。毎日だって芽衣ちゃんが顔を見せに 来てくれるっていうのなら、喜んで。  真由にも会えるし、こんなうれしいことはないわ」    私がお伺いをたてると、万寿さんが涙を見せた。  「万寿さん・・」 「もう会えないかもしれないって思ってたからね。  これっ、うれし涙よ」   そんな万寿さんの様子を見ていて、私はほっとした。   これなら、寝泊まりをしないというだけで、今までと変わりなく 万寿さんとの付き合いができそうだから。  万寿さん、これからも頼りにさせてくださいね、と 私は心の中で呟いた。 190
/379ページ

最初のコメントを投稿しよう!

116人が本棚に入れています
本棚に追加