『アイノカタチ』- 孤独だった私に手を差し伸べてくれた人がいた。 それぞれの思い出を抱えて私は生きてゆく ~♡

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361    夫の49日も終わった頃、剛が勤めていた会社から連絡があった。  「この度は誠に……」という挨拶から始まり会社のこれからの 話になった。  やはり今回のことは相当の打撃で、工場のほうは当面はリストラすることで 乗り切って行くことになったらしい。  そして逆に漁師はなかなか見つからなくて四苦八苦しているのだとか。  話を要約すると薫くんの場合は沖に出て漁ができるなら残せるが このまま工場で働くとなると厳しいということであった。  夫が保証人だったことで、本人に通達する前に私のところに 話が来たらしい。  沢木くんには真面目によくやってもらってるので心苦しいと 言ってもらえた。   「沢木くんはじめ、従業員にはもう少し先で伝えることになっています。 皆に動揺させてもいけないので、しばらくは伏せておいていただけますか」 「はい、分かりました。  いろいろとお世話おかけします」  薫くんはどうなるのかな? そしてどうするかな?   同じように事故があったとして、夫が船に乗ってなくて今生きていた としても、薫君のこと、今日言われたことと同じことを言われたんだろうか?  こんなこと、考えてもどうしようもないことは分かっている、 いるけど……。  これが世間の荒波っていう奴だと切実に感じ入るものがある。  剛という大樹を失った芽衣はただただ、心元なかった。     192
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