『アイノカタチ』- 孤独だった私に手を差し伸べてくれた人がいた。 それぞれの思い出を抱えて私は生きてゆく ~♡

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362  何とか7月に間に合わせて、万寿さんの近くに家を借りることができた。  7月の末になると宮古市では東北の短い夏を賑やかに彩る夏祭りが やって来る。  商店街では太古の饗宴をはじめとする郷土芸能を披露する たくさんの人々が演じ、そして通って行く。  去年は真由を置いて剛さんと二人で行ったっけ。  8月の祭りで海上花火大会を見た。  きれいだったなぁ~。  今年は夏祭りなんて行く気にもならないと思ってた……けど。  薫くんから誘われて、今年は真由も連れて行くことにした。  子供連れだから商店街をちょろっと歩き、ほんの少しの祭り気分を 味わう程度だったけれども。  真由は神妙な面持ちでじっと薫くんの腕の中にいた。  出店でたこ焼きを買って、それから近場の八幡様にお参りをして 座るところを探して3人で食べた。  真由は目をクリクリさせながら、おいしそうに食べている。  椅子は薫くんの膝。  食べ終えて次のを取って欲しかったのか、薫くんに向けて 取ってって言った。  「カオ、た・やい、(たこ焼き)とって」  「はい、どうぞ」  「トータン、あいがと(ありがとう)」 193
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