『アイノカタチ』- 孤独だった私に手を差し伸べてくれた人がいた。 それぞれの思い出を抱えて私は生きてゆく ~♡

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364 「薫くん、苦労するよ? 」 「なんでぇ~? 」 「だって剛さんが亡くなって、加工工場の保証人もいなくなって 工場のほうもだんだん不景気になってきてるし、いつまで働けるかも 分からない上にコブ付きの私なんか引き受けたら大変だよ? 」 「芽衣さん気付いてないけど、逆かもよ?  働き口のなくなるかもしれない前科者の俺と結婚して苦労するのは 芽衣さんのほうだもんっ。  なら、やっぱり俺は芽衣さんには相応しくない……ってことに……」    そう言う薫くんは悲しそうな顔をした。 「えっ? そんなことないよ。そんなふうに思ったことない」 「じゃ、決まりっ! 」 「えぇーっ? 」 「俺、以前のままの自分だったらたぶんこんなこと言い出せなかったと思う。  だけど、経済的な心配はいらなくなったから、だから言えたことなんだ」  「……? 」  「為替取引って知ってるよね? 」 「うん、詳しくは分からないけど一応聞いたことある」  「俺がしてるのはFXっていうやつなんだけどね」 194
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