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実は万寿の気持ちがこんな風になったのには訳があった。
去年の夏頃に、ひょいと妹の息子の誠次が様子を見に来てくれた
ことがあった。
「万寿ねえさん、(伯母にあたるがこのように呼んでくれる)何かあったら
いつで声を掛けてください、車出しますから」
「あら、誠次くん(もう40過ぎにもなろうかというおじさんなのだが)
ありがとね。
誠次くんは剛が亡くなって芽衣ちゃんも出て行って、私が独りになっても
やさしいんだね。
なのにさ、達江ったら随分素気ないんだよ。
何でなんだろうね。喧嘩したわけでもないのにさぁ~」
「あっ……あいうえおっと。
すみません、出来損ないのお袋で。
貧乏性で狭量なもんだから、許してやってください。
芽衣ちゃんが出て行ったら……まぁその、いろいろと金銭的にも
日常的なことなんかも全面的に頼られることになると思ってて
ストレスになってるみたいなんです。
万寿ねえさんにはちゃんと持ち家もあるし、年金だってあるのに
なぁ~に心配してんだか、ですわ」
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