『アイノカタチ』- 孤独だった私に手を差し伸べてくれた人がいた。 それぞれの思い出を抱えて私は生きてゆく ~♡

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370  実は万寿の気持ちがこんな風になったのには訳があった。  去年の夏頃に、ひょいと妹の息子の誠次が様子を見に来てくれた ことがあった。  「万寿ねえさん、(伯母にあたるがこのように呼んでくれる)何かあったら いつで声を掛けてください、車出しますから」 「あら、誠次くん(もう40過ぎにもなろうかというおじさんなのだが) ありがとね。  誠次くんは剛が亡くなって芽衣ちゃんも出て行って、私が独りになっても やさしいんだね。  なのにさ、達江()ったら随分素気ないんだよ。  何でなんだろうね。喧嘩したわけでもないのにさぁ~」 「あっ……あいうえおっと。  すみません、出来損ないのお袋で。    貧乏性で狭量なもんだから、許してやってください。  芽衣ちゃんが出て行ったら……まぁその、いろいろと金銭的にも 日常的なことなんかも全面的に頼られることになると思ってて ストレスになってるみたいなんです。  万寿ねえさんにはちゃんと持ち家もあるし、年金だってあるのに なぁ~に心配してんだか、ですわ」 197
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