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「ここは私の通ってた小学校だよ」
歩いて10分ほどの場所にある小学校の前を通りかかった。
最近、外壁の塗装工事が行われたらしく、とても綺麗になっていた。
「小学校はすごく楽しかった。教師になりたいっていうのも小学生の頃からの夢だったの」
同じクラスには、えりながいて、将がいて。他にもたくさんの友達がいた。
担任の先生はとても親身になってくれる、ピアノが上手な綺麗な人で、憧れだった。
中学高校は、嫌な思い出がありながらも、学校にだけはちゃんと通うことが出来たのも全部その夢のためだった。
……今まで頑張ってきたのに。
「大学に行けなくなって、教師になる夢を諦めた時、私は何をしたらいいのかな」
思わず、そんな本音が漏れてしまった。
この先のことが、本当は不安でたまらない。
翔真に会えなくなることも。就職のことも。これからの生活も、全てが不安。
ぎゅっと、隣にいる翔真の手を握る。
彼の手は今日も温かい。その温かさが、私の不安な気持ちを和らげてくれる。
《 絶対に聞こえるようになるから大丈夫だよ。聞こえなくなることより、聞こえるようになることだけを考えようよ 》
翔真の笑顔をみていると、本当に大丈夫だって思えるから不思議だ。
私は笑って頷いた。
聞こえるようになった時のことか……。
まず一番に、彼の声が聞きたいな。
大好きな、彼の声が……。
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