72人が本棚に入れています
本棚に追加
自分が何も身につけていないことに恥ずかしくなって、彼の腕から抜け出して着替えをしようとした。
けれど、私がもぞもぞと動いたことによって槙田くんも目を覚ましてしまった。
「相田さん…。離れないで。」
まだ寝起きの掠れた声で私の名前を呼んで、ぎゅっと抱きしめてきた。
「ま、槙田くん…。」
彼の名前を呼ぶとキスをされた。それはさっきみたいな深いキスじゃなくて、軽く触れるくらいのキスを何度も何度も。
「ずっと相田さんが好きだったんだ。今は寂しさを埋める存在でもいいから、俺と付き合ってくれない?」
槙田くんの真剣な表情は、とても冗談を言っているようには見えなかった。
でもずっと好きだったなんて、やっぱり信じられない…。みんなの中心にいるような人が、私なんかを好きだなんて。信じられないよ。
「あの、気持ちは嬉しいんだけど、槙田くんみたいな素敵な人が私を好きだなんてどうしても信じられなくて。」
私がそう言うと、槙田くんは目尻を下げて切なそうに笑った。
「そうだよね。俺たち、あまり話をしたこともなかったもんね…。俺は入学式の日からずっと好きだったよ。」
「…えっ?」
半年も、前から…?
最初のコメントを投稿しよう!