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「あ、俺。莉乃の友人で……。莉乃に彼氏の写真を見せてもらってたし、今日はこっちに来るって聞いてて」
……友人、ね。
莉乃から毎日、男の幼馴染がお見舞いに来てくれていると報告は受けている。
もちろん、来てくれるのはこいつだけじゃなくて、女の子も来ていると言ってた。
でもただの友人なら、毎日なんてお見舞いに行かないと思う。
だから、こいつが莉乃に特別な感情があるのはなんとなく分かる。
「いつも莉乃のお見舞いありがとうございます。彼女、だいぶ元気になって安心しました」
あくまで彼氏は俺で、莉乃に一番近い存在だとアピールしたくなった。
「そうですね。まあ、俺は毎日顔を見に行くことくらいしか出来ないんですけどね」
そう苦笑いする幼馴染は、悔しいけどやっぱり莉乃が好きな俳優に似てる。
でも、俺がタイプだって言ってくれたし……!
「莉乃は今、家ですか?」
頭の中で勝手に幼馴染と戦い、悶々と一人で考えていたらそう聞かれた。
「ああ、うん。俺はちょっと一人で頭冷やしたくて散歩に来てて」
「頭冷やしたいなんて、喧嘩したとか?」
こちらの様子を伺うように聞いてきたから、
「いや、むしろ仲が良すぎて……」
って馬鹿正直に答えてしまった。
いやいや、俺は一体、何を言ってるんだよ……。
「ああ…、まあ流石に彼女の実家だとね」
同じ男だし、何が言いたいか向こうも察したみたいで、また苦笑いされた。
「ちょっと、外で話しません?」
そう提案されて、確かにいつまでも店内で話しているのも邪魔になってしまうことに気がつく。
かと言って、俺は別にこいつと話すこともないんだけど…。
「いいですよ。コーヒーだけ買ってもいい?」
「あ、じゃあ俺もこれ買うんで」
そう言って、俺の手にあったコーヒーを取って会計に行った。
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