波間に朝がくる

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 帰りも風真のほうが早かった。まめで甲斐甲斐しいところがありつつ、男気あふれる料理センスの持ち主でもある風真は、豚バラと野菜をダイナミックに刻み焼肉のタレで炒めた丼を作って待っていてくれた。  一緒に食器を洗って、並んでソファに座って、テレビをつける。風真が追っているドラマが始まったけれど、おれは先週もその前も観ていないので、ストーリーについていけない。ドロドロ系の恋愛ドラマ、きれいな男がきれいな男からきれいな女を寝取り、べつのきれいな女がブチギレている。飽きてしまって途中から風真の腿をまたぐ形で向かい合わせに乗っかり、ぴったり抱きついて肩に顎を乗せながらスマホをいじった。風真は「重い、暑い」と言いながらも、おれの腰のあたりに腕をまわした。  大きく開いた脚のあいだに、ごわごわしたナプキンの感触がある。この存在感は風真にも伝わっているのだろうか。さっき替えたばかりだから臭いはしないはず、って、そんなことを気にする自分が女みたいでちょっと笑える。  おれは待てができるタイプなので、ドラマが終わるまでは待った。人気バンドの手がけたエンディング曲と、意味深な次回予告が流れるまでちゃんと待った。ふーっ、と感慨深げに風真が長い息を吐いたのを合図に、スマホをぽいと放って顎を引く。きょとんとしている風真に正面から顔を寄せて、 「したいんだけど」  と言ったら、風真はいつも眠たいみたいな目をぱちくりさせた。 「なあ、風真、したい」  じっと見つめながらもう一度言って、ナプキンを当てている部分を風真の腰にすりつける。がさ、と興の削がれる音がしたが気にしないことにする。何度か唇を触れあわせてみると、風真はやっと口を開いた。 「うみ、生理じゃないの?」 「そうだよ」 「じゃあだめだよ。生理中は雑菌が入りやすいんだよ」 「うるさぁーい」  どうでもいいんだよそんなことはぁ。部屋着のTシャツの裾からずぼっと手を突っ込んでやると「ひええ」と間抜けな声を出した。  自分でもなぜかわからないが、猛烈にセックスしたかった。おまえがおれの血みどろの股間に萎えるってんなら一考するが、それ以外の理由は認めない。脅すように言いながら胸の上までTシャツをめくりあげると、風真は肩をすくめた。
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