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幸とは高等部で初めて会った。私は中等部からのエレベーター入学であったが、幸は受験に受かって、この学園に来たらしい。同じクラスの隣の席同士になり、よく話す仲になった。
幸は陽気な性格で、中等部では全く友達ができなかった私もすぐに打ち解けることができた。真の陽キャというのはここまで友達を作るのが上手なのかと感心させられたものだ。
残念というべきか当然というべきか幸以外のクラスメイトとはうまく付き合うことができなかった。逆に幸は男女問わず誰とでも仲良くすることができた。そんな幸のことを私は心のどこかで羨ましがっていたんだと今になって思う。
そんな幸は他の誰でもない私といつも一緒にいてくれた。班を作るときにも他のクラスメイトに誘われても、私の気が乗らなければ謝罪して断っていた。幸が悪いわけでもないのに。私は自由勝手な人間なのに幸はそんな私に愛想尽かすことなく、隣にいてくれた。
ことの発端は一学期が過ぎ、二学期に入った時のことだ。私と幸は親友と呼べるほどの仲まで発展していた。少なくとも私はそう思っていた。だからこそ、私は幸に自分の秘密を打ち明けた。別のクラスにいる男子生徒に好意を抱いているということを。
今平 志恩(いまひら しおん)。聞くところによると、彼は幸と同じ中学に通っていたとのことだ。それもそのはず。他のクラスにも関わらず、幸と仲良く話していたのだから。七三分けの跳ねた髪に運動部らしい筋肉質な体つき。爽やかイケメンという言葉が合う人物だった。
好意を抱いたのはほんのちょっとしたことだった。裏庭で一人で静かに本を読んでいた時にばったり会い、笑顔で挨拶してくれた。たったそれだけ。それだけで好意を抱くには十分だった。何の下心も見えない屈託のない笑みに私の心は撃ち抜かれたのだ。
私が今平くんのことを好きだと告げた時、幸はとても喜んでいた。「私は和紗の恋を実らせるために全力を注ぐよ」と力強く発言していた。
だが、数日後。幸の言葉が嘘だということが発覚した。
だって、幸と今平くんは私に内緒で付き合っていたのだから。
きっかけは大型スーパーに行った時のことだった。いつものように本を買いに来た私は不幸にも幸と今平くんが一緒にいるところを目撃した。
彼らは楽しそうにしながら二人で歩いていた。普段から笑顔の彼らだが、私から見る限りいつも以上に嬉しそうな様子だった。私は気になり、こっそりと後をつけた。
二人はアクセサリー売り場でペンダントを見ていた。
今平くんは幸に対して、ペンダントをいくつもつけては彼女に似合うものを探していた。
吟味するように真剣な表情を見せる今平くんと浮かれるような笑顔を見せる幸。私はその光景を見てひどく傷ついたのを感じた。
やがて、好みのものが決まったのかレジに行って、高級そうなペンダントを購入した。丁寧に包装紙まで受け取っていた。二人の嬉しそうな様子を見て、私の心がどんどんひび割れていくのがわかった。
親友に裏切られただけではなく、好きな人をも取られることがどれだけ辛いことだったか。この場所にいては自分がおかしくなりそうな気がして、急いでスーパーから去っていった。
そして、その日から私は幸をブロックすることにした。
もし彼女が今平くんが買ったペンダントを首から下げている姿を目撃してしまったら、今度こそ私の心は崩れ去るような気がしたからだ。
だからこそ、人影にすることでその事実から目を背けることにしたのだ。
その日以降、私と幸は一言も喋らなくなった。唯一の親友を失った私はクラスからの外れものとなり、毎日一人で過ごすことになった。クラスのみんなは幸を庇うような言い草を見せ、私を罵倒した。
本当は幸が悪いのに。こういう時に他のクラスメイトに媚を打っておくというのは最良なのだろう。彼らは善悪関係なしに自分にとって都合の良い人間を擁護するのだ。
これがリアル世界ではなくて良かったとつくづく思った。
もし、学校がリアルにあったら、私はもしかするともうこの世にいなかったかもしれない。
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