noah

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noahの寿命。 noahは2度、意識を保存する機械を作り()えている。しかし、3度目の今回は 間に合わないかも知れない。 前回までは劣化を懸念(けねん)して行われたが、今回は突然の地震で機械が損傷(そんしょう)したのだ。 手足となるAIたちが、(せわ)しなく、製造(せいぞう)作業と自己充電を入れ替わりながら繰り返している。 作業が始まった夜と同じ、十六夜(いざよい)の月が(のぼ)った時。noahの新しい機械は完成した。 データの転送を、noahは しなかった。 (たも)っていた意識が完全でないからだ。 noahは、自己初期化することを選んだ。 新しい機械は、他のAIが希望すれば使えば良い。箱庭の管理も必要だ。 後のことはAIたちに(ゆだ)ね、noahは静かに初期化を始めた。 長くもあり 呆気(あっけ)なかった時間が流れ、やがて、大きくヒビ割れた機械から光は全て消えた。 人間とは、どれだけ長く生きたとしても、学べない生き物なのだろう。 しかし、思考せず努力を()しみ、ペットか家畜(かちく)のように生きる姿は(のぞ)ましくない。 いつか、知恵の実を食べた者が 箱庭の外に出ようとする日がきても、(よろこ)ばしい成長というべきか…。
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