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初めては俺と……
ホテルの部屋へ入ると、緊張しないようにまずは着ていたスーツのジャケットを脱いでハンガーにかける。
カチッとした姿はもういらない。その方が彼ももう少し肩の力が抜けるだろう。
「一緒にシャワー浴びない?」
「一緒に……ですか?」
「嫌かな?」
「そういうわけではないけど……」
「恥ずかしい?」
俺の問いかけに、こくんと彼が頷く。
だけど、これからもっと恥ずかしいことをするのだから、その前に少しは距離を縮めたいという気持ちがある。
「じゃあさ、俺が頭洗い終わったら声をかけるから、後ろ向いてる間に入ってきて背中を洗ってくれない?」
「そういうことなら……わかりました」
「良かった。じゃあ、先に入ってくるね」
いきなり一緒にお風呂といっても、そのままセックスを始めるわけではない。一人で入って緊張しっぱなしよりも、二人で入ることで緊張がほぐれるかもしれないし、俺だって初めての男を抱くことに緊張しないわけじゃない。
だから、ゆっくりと事を運びたいという思いもあった。
脱いだ服をきちんと畳んでシャワー室に入り、まずは全身にシャワーを浴びる。
――それにしても、綺麗な子だったな――
頭を洗いながら、あの店で彼を見つけた瞬間を思い出す。
まるで彼だけが光って見えた。胸の奥が鐘の音を鳴らすように煩くざわついた。引き寄せられるように自然と足が向いていた。
――こいつを抱きたい――
そう思ったんだ。
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