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――カチャリ――
しばらくすると浴室のドアが開き、中から同じようにタオルを腰に巻いた絢斗が姿を現した。
視線は右斜め下へ向けられていて、目が合うことはないけれど、やっぱりそそられるくらい綺麗だ。
「おいで……」
そう言ってベッドに座っていた体を少しずらす。すると、こくりと頷き、絢斗がこちらへ向かって近づいてくる。そして、そっと隣に腰を下ろした。
飲みかけのペットボトルを差し出すけれど、緊張しているのか腕が伸びてこないので、水を自分の口の中へ一口含むと、そっと絢斗の頬に手を添えて唇を重ねた。
素直にそれが受け入れられたことを確認すると、少し口を開かせて水をゆっくりと流し込む。ごくりと喉が動いたのがわかると、唇を離す。
「なんか、もう、ドキドキしっぱなし……」
「ねえ……さっき、本当に妬いてくれたの?」
「あ、その……おれっ、おかしいですよね……。初めて会ったばかりなのに、なんか……」
「ってか、すごい可愛いんだけど……?」
「可愛いって……」
「マジで可愛い……」
真っ直ぐに目を見て伝えると、君が恥ずかしそうに視線を逸らそうとする。
それを阻止するように頬を包み込めば、潤んだ瞳が困ったような何とも言い難い表情で俺を見つめていて、気がつけば吸い込まれるように顔を近づけて唇を重ねていた。
触れるだけのキスを繰り返しながら、角度を変える度に浅く開いていく唇から舌を割って入れれば、慣れないながらもそれに応えようとしているのがわかる。
「初めては俺とでいい?」
「はい……」
「本気で君が欲しいから……」
俊輔の問いかけにキスで余韻の残った赤い頬をした絢斗の視線が合わないまま頷いたのを確認すると、くいっと顎を持ち上げて見つめながら伝えた。
今まで何人もの男と関係を持ってきたけれど、これほどに感情が溢れ出したことなんてなかったかもしれない。
俺は今、本気で君が欲しいと思った――。
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