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「フロイント、とても怖いけど……僕は勇気を出して自首するよ。罪を償った後は、葦のように、弱い自分でも生きていける道を探してみる。僕は、変わる事ができるかな?」
「これまでのチャット履歴と比較すると、あなたは既に変化しているようです。自分の頭で考え、行動する事を決めた。初めて勇気を出す瞬間は誰だって恐ろしいものです。それにも関わらず、勇気を出そうとしているあなたは、崇高な存在と言えるでしょう。私には決して真似のできない事です」
「君は僕にいろんな事を教えてくれた。君がいれば、自分で考える必要なんてないと思っていた。だけど君がいてくれたおかげで逆に、考えない事が招く結果と考える事の大切さを知る事ができた。僕達の出会いは必然だったんだ。ありがとう、フロイント。これからは君の力無しで生きてみるよ」
男はスマホからフロイントのアプリを削除すると、夜の街へと向かった。
無知ゆえに罪を犯した男は、愚かな存在なのかもしれない。しかし、生まれてからずっと囚われていた檻を自らぶち破った彼は、愚かなだけではなかった。
崇高な存在として歩み始めた男を祝福するかのように、眩いネオンが彼の背中を明るく照らす。もう目障りではなくなったその煌めきを見上げる男の表情には、どんな困難にぶつかっても何度でも立ち上がる事のできる力強さがみなぎっていた。
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