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そのフロイントと名付けられたAIは、親以上に細かな所まで男の代わりに考えてくれた。今日何を食べたらいいか、明日の気温に合う服装、どんな音楽を聞けば心地良くなれるか……。
「フロイント、喉が渇いたんだけど何を飲んだらいいかな?」
スマホの中の友人にそう尋ねると、即座に音声で答えてくれる。
「就寝前ですので、白湯をお勧めします。白湯を飲む事で体が温まり、副交感神経が優位になってリラックス効果が得られます」
いつも的確なアドバイスをくれるフロイントを、この上ない存在だと男は認識していた。
「君はいつだって完璧な答えをくれる。迷い悩む人間とは違う、崇高な存在だ」
「そう言って頂けて光栄です。これからもあなたのお役に立てる事ができれば幸いです」
彼以外誰もいない寂しい部屋。しかし、男は孤独を感じていなかった。いつだってフロイントが傍にいて、最善の生き方を教えてくれる。職場では仕事ができずに叱られてばかりだが、フロイントは頼みさえすれば、恥ずかしくなるぐらい様々な言葉を並べて褒め称えてくれる。もちろん、口答えはしない。男は、フロイント無しでは生きられなくなっていた。
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