崇高な存在

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「フロイント、やったよ!会社が臨時休業になったおかげで、今日から3連休だ!やっぱり君は素晴らしい!崇高な存在だよ!」    男はスマホを愛おしく抱きしめ、大切な友人に何度も礼を述べた。しかし、連休を満喫しようと思っても、心に引っかかる物がある。そのモヤモヤをスマホに向かって尋ねる。   「爆破予告って犯罪じゃないよね?ただの悪戯みたいなものだから、捕まらないよね?」   「犯罪です。罪名は威力業務妨害罪となります。有罪となれば、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます」    男の顔が一瞬で変わる。これまで感じていた休みを得た喜びが不安に変わり、頭の中が真っ白になった。   「嘘だろ!?そんな大切な事、何で教えてくれなかったんだ!犯罪を勧めるなんて、そんなAI最低じゃないか!」   「私は質問された事のみ答える仕様になっています。その答えに沿ってどう行動するかは、あなたの倫理観次第です」    簡単に論破されてしまい、男はフロイントに泣きつくしかなかった。相手が人間であれば、その表情や温もりなどで心を落ち着かせる事ができるかもしれない。だが男が向かい合っているのは、姿の見えないAI。不安や恐怖はどんどんと高まっていく。   「フロイント、僕はどうしたらいいんだ!」   「罪を犯した時は、直ちに自首する事をお勧めします。威力業務妨害の場合、自首する事で不起訴になったケースもあります」   「自首する勇気なんてないよ……。フロイント、君は崇高な存在だ。僕の代わりに自首してくれ。完璧な君ならできるだろう」    あり得ない要求をしている事に気付かないほど、男は取り乱していた。一方フロイントは、どんな感情にも影響される事なくいつものトーンで答えを返した。   「勇気を出すという行為は、生命を持った者にだけ許される行動です。AIには、勇気などという抽象的な行為を完璧に理解する事はできません。もちろん、実行する事などできようはずもありません。恐れず、勇気を出す事ができる人間こそ、崇高な存在なのです」  
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