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「きゃっ」
乾いた手のひらに背筋をたどられ、体をのけぞらせたが逆効果だったかもしれない。反り返った喉元に唇を寄せられ、上下唇で軽く挟まれながら吸いつかれる。
「んやっ」
彼の胸を両手で押し返すがびくともしない。それどころか反対に押されてソファーに仰向けに倒れ込んだ。
「あ……っ」
真上からじっと見つめられる。瞳の奥にこれまで向けられたことのない熱が見え隠れする。鼓動が早鐘を打ち、頭が真っ白になる。
「ちゃんとわかったか?」
「え、あ……え」
意味を瞬時に理解できない。考えようと思うのに頭がうまく働かないのだ。彼はそれをわかったかのように妖艶な笑みを浮かべる。
「男としての俺は合格?」
本当だったら迷わず肯定すべきところだ。けれど首を縦に振るのをためらった。なんとなく癪だったのだ。キスでいいように翻弄された後でうなずけば、簡単に堕ちる女だと思われてしまう。
そもそもこんなテスト、私には必要ないのに。そう思ったらむくむくと反抗心が湧き上がった。
「そういう圭吾お兄ちゃんこそどうなの? 変な同情なんて要らないから正直に答えてよ」
だめならだめだといっそはっきり言ってほしい。その方がスッパリと諦めもつくだろう。淡い初恋の残骸をシンガポールの海に捨ててしまうのも手かもしれない。
覚悟を決めて見上げたら、彼が答えづらそうに視線をさ迷わせた。
やっぱりだめなんだ……。
あんなに官能的なキスを交わしても、彼の中の私は〝妹〟から脱却できないのだ。そう考えたら幼なじみという関係すらむなしくなってくる。
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