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忙しくてもこうして普段から少しずつ料理をしておいた方が、子どもができたときに慌てなくて済むわよね。
そう考えた瞬間、頬がじわりと熱を持った。
〝子どもができたとき〟――だなんて、当然のように考えるようになっている自分に驚く。
この結婚には〝子作り〟も条件に含まれているけれど、彼は初夜のときにそれはしばらく保留にしようと言った。
『新しい環境に慣れるまで、もうしばらくはふたりの時間を楽しもう』
それもそうかとうなずいた。
あくまでこの結婚の目的は、美奈子ママを元気にすることなのだ。彼の母親は私達の結婚を機に、徐々に明るくなっているそうだ。
だけど、急いで子作りをする必要がないのに、どうして彼はあんな風に私を抱くのだろう。
『やっ、だめ……も、もう……っ』
『まだだ、まだ足りない。もっとだ、香子』
突如として脳内に鮮烈に浮かび上がってきた光景に、顔から火が出そうになる。一昨日の夜を脳内から追い出すべく、勢いよく頭を左右に振った。
いったいどこからあんな体力が湧いてくるんだろう……。
「なにやってるんだ、香ちゃん」
「ぎゃっ!」
真後ろから声をかけられて、飛び上がりそうなほど驚いた。
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