5.お弁当とイレギュラー***

3/32
前へ
/199ページ
次へ
 忙しくてもこうして普段から少しずつ料理をしておいた方が、子どもができたときに慌てなくて済むわよね。  そう考えた瞬間、頬がじわりと熱を持った。 〝子どもができたとき〟――だなんて、当然のように考えるようになっている自分に驚く。  この結婚には〝子作り〟も条件に含まれているけれど、彼は初夜のときにそれはしばらく保留にしようと言った。 『新しい環境に慣れるまで、もうしばらくはふたりの時間を楽しもう』  それもそうかとうなずいた。  あくまでこの結婚の目的は、美奈子ママを元気にすることなのだ。彼の母親は私達の結婚を機に、徐々に明るくなっているそうだ。  だけど、急いで子作りをする必要がないのに、どうして彼はあんな風に私を抱くのだろう。 『やっ、だめ……も、もう……っ』 『まだだ、まだ足りない。もっとだ、香子』  突如として脳内に鮮烈に浮かび上がってきた光景に、顔から火が出そうになる。一昨日の夜を脳内から追い出すべく、勢いよく頭を左右に振った。  いったいどこからあんな体力が湧いてくるんだろう……。 「なにやってるんだ、(きょう)ちゃん」 「ぎゃっ!」  真後ろから声をかけられて、飛び上がりそうなほど驚いた。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9370人が本棚に入れています
本棚に追加