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ハアハアと荒い息をつきながらぐったりする。背中に当たるテーブルの感触がひやりと心地よい。
うっかり目を閉じかけたところにひざをつかまれハッとした。彼が固く兆したものを取り出そうとしている。
「ちょっと待って!」
切羽詰まった私の声に彼がぴたりと動きを止める。ここぞとばかり自分の腕を突っ張り棒のようにして彼の体に突き立てた。
「さすがにそれは無理よ」
「どうして」
どうしてって……!
「し、仕事に行かなきゃだもの」
今からそんなことをされたら、さすがに仕事に遅れてしまう。
「無理のないよう、早めに終われるよう調整するから」
調整って……! そんな残業のお願いじゃあるまいし!
いつもの情事を振り返ってみても、今からなんて絶対に無理だ。体力のある彼は大丈夫かもしれないけれど、間違いなく私はヘロヘロになってまともに動けるまで時間を要してしまう。そんな余裕が今この場にあるはずがない。
私の制止を押し流すように、彼は屹立した自身を蜜口にあてがう。
このままじゃ流されちゃう……!
「同意のない性行為は法律違反なんでしょ!」
予測される感覚に備えて目を固く閉じたが、いつまでたってもそれが来ない。恐る恐るまぶたを開くと目の前に顔色を変えた彼がいた。
「け、圭君」
「ごめん」
彼は口もとを手で覆い、顔を背けてうつむいた。
思っていたより何倍もショックを受けている様子の彼に、私も動揺する。そこまでショックを与えるつもりなんてなかった。
「あ、あの、圭君、今のは別に――」
「本当に悪かった。もう二度としない」
「え?」
ポカンとしているうちに彼は「髪乾かしてくるよ」とバスルームの方へ行ってしまった。
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