影武者

　今から30年程前。

　半導体開発競争の過激化に伴い、各国の産業スパイ活動は当然のことながら活発化していた。
　そんな中、バブル崩壊以前のA国は、金にものを言わせて大量のカラス型ＡＩ、通称影武者を日本全土に送り込んだ。

　当初、影武者の役割りは、産業スパイであった。盗聴・盗撮の他、電波妨害・ネットへの不正アクセス等が主であった。

　だが、数年前、ニューロテック技術確立以降に製造された最新式の影武者には、日本国民の歴史を覆す極秘機能が搭載されている。

　ニューロテックとは、脳の活動をモニタリングし、或いは脳を刺激し治療や能力向上をうながす技術である。
　言い方を変えれば、脳をコントロールする技術である。

　影武者が我々日本国民一人一人の脳の活動をモニタリングし、有益な活動記録は本国に送信保存され、逆に危険分子を発見した場合は、即時、対処されるのである。

　即時、対処されるとは、どういうことか。

　それについて、具体的に解説しよう。