影武者

君は大丈夫か？！

　仲間のイジメを見て見ぬふりをする日本人を、見かけたことはないか？

　小さなつまづきや叱責に耐えられず学校や会社を辞めてしまう日本人を、見たことはないか？

　政治がおかしい、政治家が信用できないと感じながら、声を上げず行動を起こさず、まあ仕方がないとあきらめてしまう日本人を、見たことはないか？

　地域のため、家族のためより、自分に好都合な条件ばかりを優先し、明日の予定を決め未来の計画を練る日本人を、見たことはないか？

　世界で戦争が起ころうと伝染病が広まろうと、自分の身に迫るまでは気にも止めず身勝手な振る舞いをする日本人を、見たことはないか？

　保育所の子どもの声がうるさい、除夜の鐘がうるさい等の苦情を平然と語り、地域こぞって保育所の建設に反対したり伝統文化の除夜の鐘まで廃止に追い込む事が正義だと考えている日本人を、見たことはないか？

　家族や、地域や、学校や社会のために、果たすべき責任を感じる大人が少なくなり、その恩恵は受けたいが責任は果たしたくないという卑怯な日本人を、見たことはないか？

　日本民族とは、そういう民族だったか？

　何千年という日本文化は、そうしたエゴと無責任を恥とも思わない鉄面皮たちが築き上げた文化だったろうか？

　胸に手を当てて、よくよく考えてみて欲しい。

　他人の事までは、わからなくても仕方がない。

　せめて、各自、自分自身の人生を振り返ってみていただきたいのだ。

　生まれた時から自分は同じ自分を生きてきただろうか。
　若い頃、もっと反骨精神を持っていなかったか？
　世の中に、様々な矛盾を感じてはいなかったか？

　いつの間にか、世の中とはそんなものだと、長いものに巻かれて薄笑いを浮かべる情けない人格に変化してはいないか？

　だが。

　その変化を実感したとしても、君は反省する事はない。恥ずかしく思う事もない。

　なぜなら、それは君が自分の怠惰のせいで変わってしまったのではないからだ。

　君が変わってしまったのは、影武者のせいである。Ａ国の陰謀なのである。

　影武者が、君の脳波をモニタリングして、君の脳が優れていたからこそ、危険分子とみなされ、その秀逸なる思考や勇猛果敢な情熱をねじ伏せる超音波や電磁波を照射され続けたためだ。

　何度も思い切って立ち上がりかけた君の覇気は、影武者が発する魔の波動にコントロールされ、ゆっくりゆっくり長い年月をかけて侵され、阻害され、消沈してしまったのである。