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11 side関 悠二 離れから庭を歩き、店の中を通り、そのまま大通りに出てタクシーを捕まえた。 支払いもせず…っていつも課長が払うから…俺一回も払った事ないや…。 結婚… 俺にとって結婚が幸せになる日が来るなら…別れるって言った。 課長と?別れる? ボタボタと膝が濡れていく。 タクシーの運転手がバックミラーで「お客さん、大丈夫?」と聞いてくる。 そう言われて、俺の涙なんだって、認識した。 グズグズと腕で涙を拭い「大丈夫っす」と苦笑いした。 追いかけて来ない。 沢田の話がしたかったんだ。俺たちの話じゃない。それなのに…どうして。 首元に手を置くと、じんわり痛んだ。 噛まれた痕も、身体中にあるキスマークも、俺が大好きなあの人の愛し方。 他の誰かに 同じ事をしないでくれ。 他の誰かを 同じように…愛さないでくれ。 ヒックとしゃくりあげた俺は、もうタクシーの運転手を無視して泣いた。運転手は最初こそ心配したが、声をあげて泣く俺に、迷惑そうに眉を顰めた。 自分のマンションに着いた頃、何処かで見ていたかのようにタイミングよく携帯が鳴る。 相手は課長だ。 「もしもし…」 「家か?」 「…はい」 「…今から」 「来ないでください」 「…会いたい」 「来ないでください」 「関…おまえに会いたいのは俺のワガママだって分かってる…それでも…今、会いたいよ」 「……ぅゔ…狡い…狡いんだよっ!あんた、いつもそうだっ!俺ばっかり!…俺ばっかりあんたが好きなのかよっ!」 「いいか、関…抱くから準備しとけ」 電話が切れたのに、愛しい声が聞こえていた携帯が耳から離せずに、また泣いた。 いつからこんなにも女々しくなったのか。相手なんて、使い捨てのおもちゃみたいに変えてきたのに…あの人だって、そうだったはずなのに。 早く…早く側に… 側に来て下さい。
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