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12 side宝井 守 タクシーに乗ってただ流れる窓の外を見ていた。 選択肢を残してやる?一体どの口がそんな事を言うのか…この一年、関を何度自由にしようと考えた事か。 その度に失敗して、アイツが動けなくなるまで抱き潰した。俺の都合で、きっとアイツはわけが分からない事もあったと思う。 ずっと、長い時間、同じ相手と過ごすのが苦手だった。もって一ヶ月が最長くらいだ。飽きるとも違う、息苦しさ、束縛や、伴わない愛情、重ならない感覚、相手からの想いばかり膨らんで、俺は逆に気持ちが萎えるばかりだった。 自分はその辺に関して、人をきちんと愛せない。これは病気なんだなと半ば諦めていた。 好きだと言われたから一緒にいる。身体を借りる。でも、好きかどうか、俺はどんどん分からなくなる。 そんな俺が、関にはそうじゃなかった。 好きで苦しい 初めて知った愛おしさに、何度も怖くなった。 ずっと女が好きだった。男で遊んだのは遠い昔に一度きりだ。 自分がゲイだったのかとも考えた。だけど、アイツ以外の男に下半身は反応しない。驚く程、正常に同性としてしか扱えない。 壊れたのは、関に対してだけだった。そんな事でさえ、いまだに信じられないでいる。それくらい、アイツは今、俺の中に住んでいた。 「はぁ…ダッセェ」 ゴンと窓ガラスに頭をうち付けて目を閉じた。 関は…誰のものでもない。 関は…いや、違う…。 関は俺のものだ。 俺がそうしたいんだ。 関が泣きながら、俺ばっかり好きなのかと怒っているのが不思議だった。 こんなに特別で、こんなに好きなのに伝わっていない。 今まで人を大事に出来なかったツケが回ってきてるんだろうか。 関のマンションに着き、俺は苦笑いを浮かべて足を進めた。
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