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8 side宝井 守 レジでタバコの番号を言いながら正直動揺していた。 誰だ!アイツにクールビューティーとかあだ名つけた奴は!ぜんっぜんクールじゃねぇだろっ!あんな思いっきりセックスしてる時みたいな顔して、トイレ行くとか言ってんじゃねぇよっ! こっちの股間事情も考えろって 「課長」 「ぅわああっ!」 「ちょっと〜、ひっどいです!遅いから見に来たのにぃ」 俺は突然現れた沢田にビックリし過ぎてお釣りを落としてしまう。 「もーっ課長ったら、案外おっちょこちょいなんだから!」 小銭を拾い立ち上がると、沢田ははしゃぐように腕に絡みついてきた。 「こらっ、カフェラテ溢れるぞ」 「はーい」 「車で飲んで待っててくれ。一本吸ってから戻る」 「え〜、まだ待たすんですかぁ〜」 「文句言わねぇの!ほら!カフェラテだ!」 紙コップを押し付けて沢田を追い払った。 灰皿が置かれたコンビニの側面でため息をつく。 梶の奴、最近疲れてんのは振り回されてるからかもしれねぇな。 俺はタバコを取り出して口に咥えた。 ライターを探すが見つからない。 「はぁ…クソ…車か」 取りに行きたいのは山々だが沢田の相手をするのが面倒だった。 ため息をついて、咥えたタバコを箱にしまおうとしたら、横から抜き取られてビックリした。 「関っ」 「ライターないんでしょ」 「…車にはある」 「課長の方が疲れてますね」 関がクスッと笑うから天を仰ぎながら「若くねぇわ」と呟いた。 関は俺から抜き取ったタバコを咥えて火をつける。 フゥーッと煙を吐き出して、俺に向かってタバコを差し出した。 「どうぞ。」 「サンキュ。…おまえ、さっき死ぬほどエロい顔してた。自覚ある?」 タバコを咥え一息吸い込む。 「ハハ、どんな顔してたんすか?俺」 関は困ったような顔で笑いながらそう言うもんだから、俺は我慢出来ず関にキスをした。 朝でも昼でもないコンビニの影になった側面の壁際にある喫煙スペースは無人だ。 舌を差し込み、頰を撫で引き寄せた。途端に膝がガクンと折れて、蕩けたような目で俺を見上げてくる関。 ゆっくり唇を指先で撫でる。 「先に戻ってる。」 残ったタバコを唇に挟んでやり、車に戻った。 抱き潰しそう… 俺は頭を左右に振りネクタイを引き上げた。 「遅いですよ〜!いつもこんな寄り道してるんですかぁ〜」 「悪りぃ悪りぃ、ヤニ切れ。喫煙者の悲しい性なんだよ。切れると仕事にならん。」 「関さんは?」 「アイツも一本吸ったらすぐ戻るから」 「今時タバコとかぁ〜人口少ないですよ〜、身体に良くないし!」 「だなぁ、ハハ」 沢田の会話に適当な相槌を打ちながら関を待った。 「すみません!お待たせしました」 暫くすると、関は俺と同じように何もなかった風にして車に戻ってきた。 そこからはいつも通り商材を美容室に届けてまわり、戻ったのは夕方だった。
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