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「どうしたのだ」
それは、イザナギの息子——アマテラスの弟である、スサノオノミコトでした。彼は高天原と呼ばれる姉の治める場所で悪事をはたらき、この出雲の国に追放されてきたのです。
「お前たちは誰だ、なぜ泣いている?」
二人が悲しんでいる理由を聞いたスサノオノミコトは「私がヤマタノオロチを倒してくる。代わりに娘のクシナダヒメを俺にくれ」と老夫婦に提案します。突然の申し出に面食らった老夫婦も、目の前にいる男がスサノオノミコトだと知ると「喜んで」とその提案を受け入れました。
「さて、仕事だ。二人にも用意してもらうものがある。まず何度も醸した八塩折の酒を作ってくれ。それとここを中心に八つの垣根と門をつくり、門ごとに酒を八つに分けて置くのだ」
老夫婦は急いでスサノオノミコトの言う通りに酒や垣根、門を用意しました。
「よくやった。あとは任せろ」
用意されたものを見て満足げにそう言ったスサノオノミコトは、クシナダヒメの姿を櫛に変え、自身の頭に挿しました。剣を片手に今か今かとヤマタノオロチを待ちます。
すると、凄まじい地響きとともに化け物ヤマタノオロチが姿を現します。
クシナダヒメを探すよりも先に用意された酒を見つけたヤマタノオロチは、八つの頭をそれぞれ突っ込んで飲み始めます。
しかし、用意された酒は八塩折の酒。何度も醸されているので濃度がとても高く、すべての酒を飲み干したヤマタノオロチは、酔っぱらってそのまま眠ってしまいました。
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