昔々あるところに

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 スサノオノミコトが待っていたのはまさにこの瞬間でした。  腰に差している剣を抜き放った彼は、そのままヤマタノオロチに切りかかりました。ヤマタノオロチの傷口からたらたらと赤い血が流れ出しました。  山も野原も河も、すべてがヤマタノオロチの血で真っ赤に染まりました。それでもスサノオノミコトは全くひるむことなく、ヤマタノオロチを切り刻みます。  そして刃がその尾に達したとき、中から見事な剣が出てきました。スサノオノミコトはこの剣を自分のものにし、仲直りの証にと姉のアマテラスに送りました。  この剣こそ、のちの草薙の剣——三種の神器の一つになったのです。  八雲立つ 出雲八重垣妻ごみに 八重垣作る その八重垣を  ヤマタノオロチを無事に退治したスサノオノミコトは、クシナダヒメを妻として、幸せに暮らしましたとさ。  めでたし、めでたし。    ほんとうに、めでたし、めでたし——?  これは——語られなかった、もうひとつの、物語。
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