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二十六話
葵ちゃんは昏々と眠り続けた。
「慢性的な寝不足が祟った貧血ですな。たっぷり睡眠をとりゃ明日には起き上がれるでしょ」
患者の胸元から聴診器を離し、初老の医者が診断する。
「ありがとうございます先生。遅くにお呼び立てして申し訳ございません」
医者の帰宅後、葵ちゃんの枕元に座り込んだまま青木さんが尋ねる。
「そばにいちゃだめ?」
「いけません。明日も学校だし親御さん心配するでしょ」
「でも」
「僕たちがいちゃ話しにくいことあるんだよ」
「何かあればすぐ連絡するから」
司くんと小山内さんに説得され、青木さんは折れた。
「気ィ付けてなー」
「すぐそこですからー」
大きく叫んで手を振りゃ司くんが叫び返す。不安げに二人を見送り、小山内さんが述懐する。
「本当に大丈夫なんでしょうか。お医者様のおっしゃる通り、明日には目覚めるんでしょうか」
「心配なら一晩様子を見ましょうか」
「そうしてくだされば心強いわ、お願いします。お布団と夕食の支度をしますね」
「自分でやりますよ」
「お客様にそんなことさせられません、小山内家の代表としてしっかりおもてなしします」
というわけで小山内邸に泊まる。幸い部屋は余っており、それぞれ別の客室をあてがわれた。
とはいえ葵ちゃんが寝かされた部屋から然程離れてねえ。何かありゃすぐ駆け付けられるように、あえて近い部屋を選んだのだ。
「鳳車や女たちゃ成仏したんだろ、まだ見張る必要あんの」
「依頼人を安心させるポーズ」
「仕事してますよアピールで延滞料ゲットか」
夕飯の最中、かぼちゃの煮付けを頬張りながら小声で聞く俺に、焼き魚の小骨を綺麗に取り除いた茶倉が答える。
俺としても一日滞在延長に異議なし。できることなら葵ちゃんの回復をしっかり見届けて帰りてえ。
風呂上がりに打ち合わせ、交代で寝ずの番をすることにした。一番目は俺、二番目はじいちゃん、三番目が茶倉。順番はじゃんけんで決めた。
「せやからグーの後にチョキ出す癖直せて」
「勝ちを譲ってやったんだ」
「茶倉さんはトリでええんでっか」
「宵っ張りなんで先にお休みいただきます」
「大将とは恐れ入ったわ」
「じいちゃんは中堅?」
「先鋒は若手に譲ったる。居眠りかますなよ」
訝しげな様子の茶倉に親切に説明してやる。
「今のは剣道の団体戦の呼び名。三人制の場合は最初が先鋒で次が中堅、最後が大将になんの」
「知っとる」
「素直じゃねえなあ、仲間に入りたそうに見てたから教えてやったのに」
「浴衣が左前。死に装束やでそれ」
「先に言え」
二人と別れたのち、浴衣の衿を右側が前にくるように直し襖を開ける。
和室に敷かれた布団の上でパジャマ姿の葵ちゃんが寝ていた。枕元には盥と手拭い。服を着せる際、小山内さんが体を拭いてあげたのだ。
横には司くんが持参したクッキーの小袋と「葵へ」と丸っこい字で書いた封筒が添えられてる。
「よし」
どっかり胡坐をかく。
ざっと見た感じ異常はねえ。葵ちゃんは規則正しい寝息をたて、今までの分を取り返すみてえに熟睡してる。少し窶れてるのを除きゃ安らかな寝顔といえた。
「お疲れさん。ゆっくり休んで」
聞こえちゃいねえのを承知で労い、微笑む。
庭じゃリーリーゴロゴロ虫が鳴いてる。風情を感じる夜だった。長い一日がもうすぐ終わろうとしてる。
……一、理一!」
名前を呼ばれハッとする。じいちゃんがおっかない顔でこっちを睨んでいた。
「まさか寝てた?」
「しょうがないやっちゃ」
「ごめん」
「疲れとるなら無理すな。葵ちゃん守って鳳車の手先と戦うたんやろ」
俺が座ってた場所に胡坐を組み、手の甲で追い立てる。気まずい。
「あのさじいちゃん。アレ見てどうおもった?」
媒酌人の指名は苦肉の策。俺が花嫁演じるのは無理あるし、茶倉の方が適任だった。
じいちゃんが難しげに顎を揉む。
「着物と紅だけで化けはった。アバズレ入っとるんがまたぐっとくる」
「女装評はとばして」
「正直たまげたで。よォ思い付いた」
「まぐれだよ」
「謙遜すな。小憎らしい」
「鳳車は黒無垢にこだわってたから、だったら先に着ちまえばいいって思ったんだ」
「妄執に囚われて目的と手段が逆さまになってもたか」
赤ん坊の頃に去勢され、男でも女でもねえ半端者として非業の死を遂げた鳳車は、惚れた男と蝶々座敷で結ばれ本物の女に生まれ変わろうとした。
問題はその後。
「あ――――――……キスはただの芝居で他意はねえってか、背に腹変えらんねえし」
「付き合うとんのか」
ずばり切り込まれた。
「違くて」
「男が好きなんか。親や姉さんには言うたんか」
「だ~~か~~らあ」
頭を抱える。
「誤解してんだよじいちゃん、アイツとは十年来の腐れ縁で」
「長いこと接吻しとったな」
どうすりゃいいんだ。
撃沈された俺の隣で、じいちゃんは平静を装い言った。
「茶倉さんのこと、好きか」
「……うん」
恋愛感情なのか何なのかよくわかんねえけど、アイツを守りたいって気持ちは本物だ。
「俺も青木さんと同じ。アイツが悩んでんなら一緒にとことん悩みてえし、重てえ荷物は半分持たせてほしいって思ってる」
「さよか」
「そんだけ?もっと他に」
「孫の色恋沙汰に口出しするんは野暮の骨頂」
俺がゲイだってバレたら、じいちゃんはどんな顔するだろうって何度も想像した。
嫌われるか。
蔑まれるか。
愛想尽かされるか。
現実はそのどれでもなくて、じいちゃんは剽げて肩を竦め、嬉しそうに笑っていた。
「あの人はお前ん為に体張って、お前はあの人ん為に命を賭けた。あんなん見せられたら文句なんぞ出てこん、せいぜいよろしくやっとれ」
拍子抜けするほどあっさり受け入れられ、全身の力が抜けていく。
「親父たちには内緒にしてよ」
「わことる」
「姉貴にも」
「ゆわへんゆわへん」
雑な返事にむくれる俺の頭をなで、気分を切り替え寝ずの番に臨む。
何故だか鼻の奥がツンとし、しょっぱい涙が込み上げてきた。
襖の手前で立ち止まり、腰を落とす。竹刀を横に置いて正座し、思い出の中より小さくなった背中にきちんと礼をする。
長い沈黙を破り、じいちゃんが質問を放った。
「いっこだけ聞いてもええか。上と下どっちや」
しんみりした雰囲気ぶち壊し。襖を叩き閉め、大股で廊下をのし歩く。
曲がり角から誰か出てきた。
「茶倉」
「交代したんか」
「今な」
「さよか」
「お前は?時間までまだあるじゃん、仮眠とっとかなきゃ辛いぜ。ひょっとしてトイレ?」
軽く茶化す俺をよそに、いきなり右手首を掴んで裏返す。
「いででで」
「濁ってへんな」
「そりゃそだろ、ここ来る前にちゃんとし」
「かまへん。抱かせろ」
壁ドンされた。
「正気かよ、依頼人ちだぞ!!」
「佐沼邸でもずっこんばっこんしたやん」
「あれはそっちが無理矢理……ッ、小山内さんが起きたらどうすんだじいちゃんだっていんのに」
「年寄りは耳遠い。葵が寝とる今がチャンス」
「さかりすぎだって!」
今日の茶倉は強引だ。俺の意見などろくに聞かず、手首を掴んで引きずっていく。
力じゃこっちが上だ、抗えば振りほどけるはず―……
「俺と寝るの嫌か」
無表情な声で聞かれ、喉元までこみ上げた罵倒が引っ込む。
「エっグい緊縛プレイ見せられてムラムラしとんねん」
「最ッ低だな」
おもむろに立ち止まり、俺の袖を捲り上げる。
「痕付いとる。これも立派に霊障」
肌には夥しい緊縛の跡が刻まれていた。次いで茶倉の部屋に蹴り込まれ、布団に突き倒される。
茶倉が紐を引っ張って電気を消し、暗闇が部屋を包む。
「待て、豆電」
言ったそばから闇が明るむ。奥の壁に丸窓がもうけられ、障子で漉された月の光が降り注ぐ。
茶倉が俺にのしかかり、浴衣の襟を掴んで引ん剥く。赤く炎症を起こした肌を暴かれ、乳首がツンと尖る。
「……マジヤんの?」
向こうの部屋にじいちゃんがいんのに、さすがに抵抗を感じる。相手は意に介さず首筋を啄む。
「ッ、はぁ」
「期待しとるくせに」
「して、ね、ぁふっ」
喉仏を吸い立て、鎖骨の膨らみをなぞり、乳首を根元から摘まんで搾り立てる。相変わらず前戯が上手い……なんて、感心しちまったのが運の尽き。
「緊縛プレイで連続絶頂とかガチの変態やね」
「違、ぁっあッ」
「亀甲縛りされた?」
「縛られんのは大っ嫌えだ、誰かさんにトラウマ植えられたもんでね!」
「ほな窒息プレイ?首絞めがええんか」
「お前ッ、が、さっさと助けにこねーから、うっぐ、酷え目にあったんじゃねーか!」
「勝手に迷子になるそっちが悪い」
「イケイケバリバリ霊能者が笑わせるぜ」
「戻れ言うたのにイケズして」
「俺は犬か?」
「頭の悪い雑種やな。ボール追いかけてったきり戻ってこん」
「お前だって宝くじの当選券飛ばされたら追っかけるだろ」
「額による」
「ぜってえ嘘。七等だって死ぬ気で追っかける」
「三百円と命は引き換えん」
「パッと出てくるあたり買ったことあるんだな」
「考えなしに突っ走んな」
「葵ちゃん見捨てろって?やだね」
噛み付くようにキスし、じれったげに裾を割り、脚に脚を絡めていく。
しなやかな手が下着をずらし股間を捏ね、先端に熱を集める。しごかれながら苦しげに息を荒げて返す。
「俺、も、ちょっとだけおかしいと思った」
「何が」
「座敷調べてる時、葵ちゃんがちんちんって言ったんだ。女の子だったら『お』を付けっかなって……あんま恥ずかしがってる様子なかったし」
「よりにもよって今思い出すな、どんだけアクロバティックな会話しとんねん」
葵ちゃんが見た夢を話そうか迷ってやめた。思い出すのも辛えし、鳳車だって言いふらしてほしくねえはず。
「俺が小便したくなって」
「早漏が」
「トイレ近えのは早漏たあ言わねえよ」
「頻尿が」
「息するように罵倒すんのまあまあへこむからやめてくれる?」
葵ちゃんの寝顔と別れ際に見せた青木さんの暗い顔が浮かび、自然と声が萎む。
「これからどうすんのかな。友達に戻れんのかな」
「葵が決めるこっちゃ」
情事の最中にふさわしくねえ話題の自覚はあっても、舌は止まらねえ。
「鳳車にひでーこと言っちまった。煽ろうとして、男でも女でもねえ半端もんて」
「本心ちゃうの」
「当たり前だろ」
数珠を巻いた右腕で顔を覆い、へこむ。
「俺だって半端もんだ。お前に頼んなきゃ生きてけねえ」
なのに。
「ヘタレなくせに勢いだけはいっちょまえで、自分のケツすら拭けねえのにきゅうせん様をしょいこめるとか思い上がった」
お前がいなきゃ一人前にも届かねえのに。
「わかればええねん。懲りたら二度と」
「諦めちゃいねえぞ」
偉そうな説教を遮り、首の後ろに手を回す。古風な丸窓から射す月光が、布団の上で重なり合った裸を照らす。
「きゅうせん様をよこせ」
「あのな」
「これからバリバリ修行する。体も心もタフになる」
「わざわざしんどい思いしたがるなんて物好きな」
茶倉の目が冷え込む。
「ミミズの苗床になるんやで」
「ゲテモノ上等」
「体中ほじくられるで」
「やってみろ」
「夜通し犯されて眠れへん」
「ぞくぞくしてきた」
「孕むとな、下っ腹が熱ゥなんねん。ジンジン疼いてたまらへん、腹ん中で動いてんのがわかんねん、天敵の陰陽師の倅には生理痛いわれたわ。悪阻もな……どうかすると一緒に出てくる。グロいやろ」
露悪的に自虐的に言い放ち、続ける。
「体の内側から食い破られるあの感じ。俺は肉でできとって、筒が穴になんねん。ちょっとでも気ィ抜くと暴れだすさかい、そういうときはトイレの個室に駆け込んで始末すんねん。奥ン方に固まっとって、なかなか下りてこん時は指で掻きだす。手伝いなんか誰にも頼めん、慣れるまで大変やで。耐えられるか?」
首の後ろで両手を組み、抱き寄せる。
「孕ませてくれよ」
耳朶に唇を移し、熱っぽく囁く。
「お前が思ってるよか淫乱だぜ、俺は」
だから。
「祟り神?化け物?知るか、来るなら来い。受肉がお望みなら好きなだけ産んでやらあ」
一番怖えのはお前がひとりでどっか行っちまうこと、何の手も打たねえまんま失っちまうこと。
葵ちゃんと離れ離れになるのが嫌で体を張った青木さんの気持ちが、俺にはよくわかる。
弱気を虚勢でねじ伏せ啖呵を切りゃ、茶倉の顔が情けなく歪み、何か言いかけてやめ、脚を大きくこじ開ける。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!ぁっ、は」
いきなり来た。
「もっと使えるようになったら考えたる」
「ホントっ、かよっ、忘れんなよっ」
熟れたアナルは殆ど痛みを伴わず怒張を受け入れ、前立腺を突かれるごと音速の快感が貫く。
「あッ、あッ、ぁあッ、んあっ」
汗が流れ込む片目を閉じ、残る目だけを凝らす。茶倉の首の後ろから蝶が剥がれ、螺旋を描くように昇ってく。
「痣じゃねえのかだましたなお前、どーりでおかしいと思った仰向けに転ぶとか器用すぎるもん!」
「シカトしとけ」
「だって生きてるし!式神?なんだって首の後ろに」
刺すような視線を感じる。蝶がこっちを見てる。
俄かに羞恥心が燃え上がり、茶倉を拒んで寝返りを打ち、逃がすまいと組み敷かれ今度は後ろから突かれる。
「あッ、ぁッ、ンっあ、あっ、激しッ、ふあぁッ」
粘膜をかき混ぜる音が下品に響き、赤く尖ったペニスがカウパーの濁流にまみれ、まるで泣いてるように見える。
「そこッ、イくっイっちゃ、ぁっあッすげ、くるっもういくっだめ、ちょっ待っ、くるし、んっぐ」
先端から雫が滴る。抽送のペースが増す。布団を掻きむしり、枕に顔を突っ込んで呻く。
「望みどおり耕したる」
直腸を埋める肉が鼓動に合わせて脈打ち、みちみち蠢く何かが密に根を張り巡らす。
「ひっ、ぁ」
苦しい。気持ち悪い。思いきり仰け反る。俺の中に何かいる、滅茶苦茶に暴れはじめる。
「やめ、痛ッ、小便の穴は許し、て、汚ねっ、から」
「苗床になりたいねんやろ」
「そっちはまだ挿れたことねっ、ひッぐ」
尿道口が陰唇に似てくぱぁと開き、カウパーにぬる付く触手がめりこむ。
「あ、ぁぁ」
太さは綿棒と同じ位、長さはカテーテル位ある触手が無理矢理圧を加え、ツプツプ先端をこじ開けてく。カウパーの逆流に鋭い痛みが走る。
「開通おめでとさん。初めて挿れたな」
「ずぼずぼすんのやめっ、変ッ、な感じ、ぁあっあ」
「拡張したる」
「動かすな、ンっんっ」
おぞましい逆走の感覚に括約筋が収縮、入りっぱの怒張をキツく喰い締める。
「ちゃくらそれやばっ、ほんっ無理、やぁああ」
肉色の触手が管をほじくり、片やケツん中じゃ触手が前立腺をドツき、狂おしい快感をもたらす。
「痛た、っぐ、ンなとこいじん、な、も、ずぼずぼでっ、ちんぽおかしくなるッ」
尿道を引っ掻く痛みが痒みに代わり、ずくんずくん尿意が膨らむ。耳の裏側に唇を近付け、嗜虐の愉悦に酔い痴れた茶倉が囁く。
「欲しがったのはお前や。有難く味わえ」
前から後ろから前立腺を挟んで圧迫するのと裏腹に、尿道を塞いだ異物のせいで寸止めが続き、生き地獄でもがき苦しむ。
「なんやねんガクガクして。イきっぱなしか」
「イケ、ね、腹ン中ぞくぞくしてっ、んっふうっ、切ねェ、止まんねッ、さっきからぁ」
射精を塞き止められたもどかしさに涙ぐみ、布団に突っ伏す。
「中が締まって痙攣しとる。メスイキちゃうのん」
「ぬいてっ、くれ」
「もうちょい肥やさな」
前に手を回し、尿道をくりぬく触手の動きに合わせ、敏感な裏筋をくすぐる。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ぁぁあ」
ぱんぱんに張り詰めた睾丸を揉み、竿と一緒に捏ね回す。さらには陰茎のくびれを指の輪で搾り、耳たぶを甘噛みして気を散らす。
「乳首コリコリ。すぐにでも孕めそやな」
射精を伴わねえオーガズムの特徴は余韻が持続することで、イッてもイっても痙攣が止まらず、中からぐずぐずに蕩けていく。
「ん゛~~~~~~~~~~~っ!」
孔に栓した触手が激しく尿道をこそいで前立腺を裏漉し、陰茎と二本挿し状態の触手がでたらめに前立腺を突きまくり、一番感じる突起を両方から押し潰す。
「茶倉あぁッぁ、あッあっすげえの来るっ!」
甘ったるい喘ぎに跳ね回る腰、高まる射精欲と排尿感。器用に蠢く触手が粘膜を巻き返すたび甘痒い疼きが強烈な快感に直結し、ケツん中の触手が陰茎の前後運動と微妙にずらして前立腺を狙い撃ち、小刻みにイき続けていた意識が真っ白に爆ぜる。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!」
一気に引っこ抜かれ潮を吹く。射精は一回じゃ止まらず、ぼたぼた白濁が滴る。
大の字で虚脱する俺を見下ろし、浴衣を諸肌脱ぎした茶倉が汗を拭って呟く。
「毎日」
「何が」
「移殖の仕込み。ホンマに苗床になるんなら週一なんて悠長にやっとれん、毎日入念に耕さな」
「それって……」
「一日一回、俺だけとセックスできるか」
友達が悪魔に見えた。
「フツーのセックスちゃうで。今みたいに前も後ろもミミズ責めして、体ん中がぐずぐずになるまで可愛がったる。他の男にかまける暇はやらん」
楽しげに笑い嘯く茶倉を見上げ、右手を天井に翳す。まだ蝶が飛んでいる。
「絶倫なめんなよ」
「取引成立」
きらめく鱗粉を撒く蝶を背負い、酷薄に笑む。
「一年後。一年経っても気ィ狂わへんかったら、世迷言検討したるわ」
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