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肩を抱かれているあたしは先輩の横顔を見た。すごく怒っているのにすごく綺麗。こんなに素敵な人はいない。怒りの感情ですら眩しく見える。
居酒屋の大将と女将さんが、サンダルを鳴らして俊に近づく。二人は容疑者を連行する警察官のように彼を挟み、がっちりその腕を組んで捕らえた。
「溜まってたツケ、そろそろ払ってもらおうか。てめえ、いつも半分しか払わなかったからな。そこのお嬢ちゃんが半分払ってたんだろ。それとも通報してやろうか」
大将が麻美先輩に力強い笑顔を向ける。
「べっぴんさん、かっこよかったぜ。こいつの始末は任せな。うちのツケは、どんぶり勘定で計算するんだ。痛ぇ目を見させてやるから安心しな」
連行されていく俊。
あたしは憐れむ気持ちなんかなかった。
麻美先輩の輝きがあたしを染めていく。
だからあたしは、伝説と言われたあの卒業式を思い出さずにいられなかった。
おわり
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