優しい観客と幻想の崩音

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どうしたらいいんだろう、誰に相談すれば道が見えるかな⋯。 そう考えたとき、高校時代の憧れの先輩があたしの心に蘇ってきた。 (あさ)()先輩。 あの頃、みんなが憧れて、敵視する奴らをモノともせず、凄まじい光を放っていたヒト。 先輩はもうあたしのことなんか忘れているはずだ。演劇部で端役しか()れなかった、どこにでもいる平凡な後輩を覚えているわけがない。 でも麻美先輩なら、何か希望を見せてくれるかもしれない。あたし一人じゃ今の状況を打破できない。友達は同じことを言うだけ。「そんな奴とは別れろ」と言うだけ。 親身に聞いてくれているようで、結局みんな他人事。きっとあたしが自殺したって、どんなに身を堕としたって、本心から助けてくれようとしないんだ。ただ愚痴や浅い話をするだけの仲間。そんなものを本当の仲間と言うのかな。 スマホを取って、アドレス帳を開く。 『及川(おいかわ)麻美先輩』と書かれた箇所には、先輩の電話番号が載っている。誕生日や血液型なんかの情報はあるのに、繋がれるのは電話だけ。あたしが先輩に聞けたのはそれだけ。勇気が出せなかった自分を呪いたい。電話なんて、めちゃくちゃハードルが高い。
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