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そして、神々の加護を受けるからか、ちょっと普通の感覚と違うところがある。
ハヴェルを帝国のスパイと気づいていながら、庭師としての腕を優先し、雇ったのだから。
しかも――
『俺たちが仲良く暮らしていると、報告してくれただろうか』
気になるところは、そこしかなかったようで、後は特に興味を示していなかった。
――アレシュ様は余裕があって、そこが素敵なのですけどね!
心の中で、こっそり惚気てしまった。
「シルヴィエ。ここにいたのか? 医療院の付属学院に、秋からの入学許可が出たぞ」
「アレシュ様!」
アレシュ様が入学許可証を手に、薬草園に入ってきた。
そして、ハヴェルがいることにも気づいた。
「ハヴェルもいるのなら、ちょうどよかった。頼みたいことがある。医療院の院長が、薬草の生育についての講義を頼みたいと言って、うるさくてな。引き受けてくれるか?」
「もちろんです」
「森番の件は聞いたか?」
「はい。シルヴィエ様からお聞きしました。ドルトルージェ王国のご厚意に感謝し、森番の役目をお引き受けしたいと思います」
アレシュ様は微笑みを浮かべ、うなずいた。
ハヴェルは遅くなってしまったけど、幸せになろうと決めたのだ。
私とアレシュ様を交互に見る。
「お二人の邪魔になってはいけませんから、これで自分は失礼いたします」
ハヴェルは深く頭を下げ、この場を離れた。
私たちはハヴェルの背を見送り、それ以上、この件について語ることはしなかった。
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