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お姉様は自分だけのためには怒らないけれど、人々のためには怒るのだと知った。
もし、お姉様が呪われていなかったら、お父様の後継者はお姉様だったかもしれない。
目覚めた兵士たちは、お姉様の声が聞こえたらしく、それを聞いて涙を流していた。
「お父様はどうされますか? 可愛い娘に生きていてほしいでしょう?」
お父様はうつむいた。
お姉様が要求しているのは、ふたつ。
ドルトルージェ王国に攻め込まないこと。
お兄様の即位を認めること。
これは、脅迫同然。
「ドルトルージェ王国は神が住む土地。その土地に戦争を仕掛けるということは、神に刃を向けたのと同じ。退位だけで済むのをありがたく思ってほしいものだ」
追い討ちをかけるアレシュ様の言葉――お父様が敵うわけなかった。
「……承知した。無傷でいられることを感謝する」
お父様はアレシュ様にひざまずいた。
私も死にたくないのなら、そうするしかなかった。
――自分の命と引き換えに、ドルトルージェ王国に従いながら、生きていく未来が決まったのだった。
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