33 嫁がせていただきありがとうございます

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 季節はひとつ過ぎて、秋になった。  薬草園は少しずつ種類を増やし、可愛らしい小花を咲かせていた。  ガーデンテーブルと椅子が置かれた薬草園で、薬草学の本めくっていると、ハヴェルが現れた。 「シルヴィエ様。花をお持ちしました」 「ありがとう」  テーブルの上に飾られた花は、ガラスの水差しにこれでもかというくらい入っていた。  薬草園を手入れしている庭師たちは忙しく、この花は後々、乾燥させ、材料のひとつになる。 「ハヴェル。帝国のお兄様から手紙が届きました。貴族たちの後押しもあって、うまくやっているようです」 「そうですか。ラドヴァン様は優秀でいらっしゃいますから、心配しておりません」  相変わらず、ハヴェルは顔が見えないくらい髭をはやし、辛うじて青い瞳を覗かせるだけだった。  だから、今、お兄様の話を聞いて、なにを思ったかはわからなかった。  秋の涼しい風が通り抜けていく。  少しの沈黙の後、私は言った。 「ハヴェル。こちらに、私の世話をしてくれていた侍女を呼びよせることにしました」 「なぜ……」  顔は見えなくても、ハヴェルが動揺したのがわかった。 『なぜ、それを知っているのですか』  そう言いたかったはずだ。  私は微笑み、その言葉の先を言わせなかった。
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