こども食堂

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お土産と言って、あんみつを3つ持たされた。 これから取り立てに行く家は、家族3人暮らし。どうせ、利子の一部しか払えねえ高齢者だ。 「松原ぁ!!」 玄関のドアを蹴り上げた。 わかっている。コイツに返済できるあてはない。 「いんだろ、コラァ!!出てこいやぁ!」 インターフォンを何度も鳴らす。 松原進が債権者だ。月々10万程度のキャッシングを繰り返し、元金が100万円を超え、利子が膨れて今となっちゃ700万円の借金となった。 「借りたもんは返せコラァ!!」 ドアノブを持ってねじり回す。 「進は今いなくて…。」 年寄りのババアが窓を開けてそう言って来た。縦に格子のある窓で、そこからなら顔を見せても引っ張り出されることはないと分かっている。 「すみません。きょうは帰ってください。」 さっきもらったあんみつが、俺の手元にある。 震えるババアが途端に不憫になった。 人間は不平等だ。 裕福な人間は他人に分け与えることができて、そうじゃねえ人間は、ありもしねえ金をむしり取られながら死んでいく。 「ババア。最近、甘いもん食ったか?」 「え?」 あんみつの容器は、ギリギリ格子を通った。 「あ、あんみつ?」 「俺からやるんじゃねえ。」 「え?」 「進とジジイにもやれ。」 「え?」 「観音菩薩がくれたもんだ。残すなよ。」 俺はババアが引っ込んだのを見て窓を閉めた。 窓の奥、ババアが啜り泣くのが聞こえて来た。 不幸なやつと幸せなやつの境目はどこにあるんだろう。
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