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10月5日(金)
足が勝手に寺に向いちまう。
きょうは幟旗が出ていない。場所は間違いなく登福寺だ。首を傾げて門の奥に目をやった。
「あら?」
声の方を見ると菩薩が買い物袋を持って立っていた。
「どうしました?お墓参りですか?」
「いえ。墓はありません。」
菩薩は、幟旗をいつも立てている土台に目をやった。
「…あ、こども食堂ならきょうはお休みです。平日なので。」
だけど、この前来たのも平日だ。
「この前はインフルエンザで休校だったので。」
「……。俺が聞いてねーのにベラベラ話すんですね。」
「はは。私ったら、おしゃべりで。」
人妻が楽しそうに喋ってるのを見ると複雑な気分になる。
俺の母親には浮気癖があった。
「入ってください。せっかく来たんですから。」
「……。」
「お料理得意ですか?」
「は?」
「野菜の皮剥き手伝って欲しいんです。」
「はあ?」
「暇でしょ?」
警戒しろ。俺はヤクザだぞ?
とんでもない暴力を振るう人間なんだぞ?
「ほら、早く!たくさんあるんだから!」
菩薩が俺の腕を引っ張って俺は寺に入らざるを得なくなった。
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