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観音堂には、コンテナが3つ。
にんじん、じゃがいも、玉ねぎ。
全部歪な形だったり、デカすぎて中が空洞になったりしているものだった。
「うますぎなんだけど。」
菩薩は俺の器用さに目を丸くした。
「毎日やってるんで。」
皮を剥くだけじゃなく、切って大きさを揃えていた。
「で、明日は何作るんですか?」
「カレー。100人分」
「いつも1人でやってるんですか?」
「違うよ、住職と、農家さんと、あと、お肉屋さんも暇があったら手伝ってくれる。きょうはあなたが暇そうにしてたから手伝ってもらった。バイト代は……明日食べに来る?ご馳走する。」
俺は初めて来た日のことを思い出した。
「いいんですか。」
「いいよ。」
菩薩が楽しそうに笑う。良い笑顔だけどなんかあんまり良い気がしない。
「あんま、よその男に笑顔振りまかない方がいいですよ。」
「え?」
「旦那悲しみますよ。住職の嫁ですよね。あなた。」
菩薩はいきなり大笑いした。
「ははは!違うよ、住職は兄!」
背中をバンバン叩かれた。
「え?」
「お嫁さん来なくて大変なんだからー。絶賛婚活中。」
兄妹…か。坊主は金持ちでも、嫁が来ない奴もいるんだな。
「まあ、私もそうなんだけどね。あーあ。イケメンな旦那が欲しいなあー。なんつってー。」
ケラケラ笑うおおらかな菩薩が嫁に行かねーなんて、なんて勿体無いんだとそう思う。
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