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カレーの下準備が終わったのはそれから1時間ほど後だった。それから、寺務所でコーヒーを入れてくれて、少し話した。
菩薩の名前は栄江といった。俺の名前は銀次だと伝えると
「すごい、蒲田行進曲じゃん!風間杜夫じゃん」
「それ、銀四郎です。」
「え?そうなの。」
「どんな間違い方してんですか。」
栄江はスマホで検索してガックリと肩を落とした。
「住職は知ってましたか?」
そばにいた住職は、静かに首を縦に振った。
「うん。銀ちゃんは銀四郎だよ。」
物静かな優しげな住職がなぜ女にモテねーのか不思議だと思った。
壁にかけてある時計が目に入った。そろそろ取り立ての時間だ。
「あ、俺そろそろ。」
立ち上がると、栄江も立ち上がった。
「銀ちゃん、また手伝ってよ。」
「え。」
「暇でしょ?お願い。」
俺はフリーターみたいに見えてるんだろうか。まあ、暇な時もあるけど。
「良いですよ。明日、皿洗います。」
「え、いいの?」
「はい。まあ、暇なんで。」
ヤクザもんの俺だって、そのくらいしたって、別に構わねーだろってそう思った。
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