13人が本棚に入れています
本棚に追加
「ババアてめぇゴルァ!金がねーくせにパチ屋行ってんじゃねぇぞー」
慎之助は、おもっくそ素質があった。歳食ったババアでも、女は女だ。加減しろって思う俺の方が間違ってる。
借りた金は返さなきゃいけねえ。
「本当にすみません。少しでもあると我慢できなくて。」
慎之助は、髪の毛を引っ張りながら耳元で結構な音量で女に言った。
「その金はこっちによこすのが筋だろうが!」
鼓膜が破れちまうよ。
慎之助の肩を叩いた。
「ちょっと下がれ。怖がってんだろ。」
この女は、ギャンブル依存症だ。病院にぶち込んでやった方が身のため。返済はその後でも構わねえ。問題はこいつがひとり親だってこと。
「あんた、子どもいんだろ。」
「います。」
「子どもに恥ずかしくねーのか。こんな姿、もし見られたらどーすんだ。つーかよ、子どもに飯食わしてんのか?」
「……カップ麺を。」
指差した台所のテーブルに二つばかりカップ麺があった。
「こども食堂でもらいました。私もあれで生きてます。」
「それで親かよ。どう思う?自分のこと客観的に見てみろよ。」
女が啜り泣く。
「だって、……だって。」
「なんだよ?」
女が俺の腕を掴む
「リーチの瞬間、あの瞬間が……。」
「クソが。ガキは児相に送る。てめぇは病院だ。」
俺がそう言うと慎之助が顔色を変えた。
「ソープじゃないの?兄貴。」
小声で攻め立てられる。俺は舌打ちをして精一杯の悪態をついた。
「こんなババァじゃ抜けねーよ。」
言った瞬間、玄関の扉が開いた。
頭ボサホザの赤いランドセルを背負ったガキだった。女の子じゃなくて男の子だ。
「おじさんたち誰?母ちゃんどうしたの?」
女は、ガキの顔を見て過呼吸になる。
めんどくせぇ。
「慎之助、救急車呼べ。過呼吸だ。精神科のある佐久田総合病院を指名しろ。ギャンブル依存症だ。入院させるしかねえ。」
ガキが女に近づいてきた。
「母ちゃん。死んじゃうの?」
「死なねーから。てめぇは児相で待ってろ。」
救急車が来て女が運ばれた。
俺と慎之助はガキを児相に連れて行った。
「黙ってろよ。慎之助。」
「え。」
「最初で最後の、俺からお前への一生のお願いだ。」
「……はい。」
慎之助は、黙ってろって言われたら、黙っているタイプだ。
最初のコメントを投稿しよう!