おやっさん

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「ババアてめぇゴルァ!金がねーくせにパチ屋行ってんじゃねぇぞー」 慎之助は、おもっくそ素質があった。歳食ったババアでも、女は女だ。加減しろって思う俺の方が間違ってる。 借りた金は返さなきゃいけねえ。 「本当にすみません。少しでもあると我慢できなくて。」 慎之助は、髪の毛を引っ張りながら耳元で結構な音量で女に言った。 「その金はこっちによこすのが筋だろうが!」 鼓膜が破れちまうよ。 慎之助の肩を叩いた。 「ちょっと下がれ。怖がってんだろ。」 この女は、ギャンブル依存症だ。病院にぶち込んでやった方が身のため。返済はその後でも構わねえ。問題はこいつがひとり親だってこと。 「あんた、子どもいんだろ。」 「います。」 「子どもに恥ずかしくねーのか。こんな姿、もし見られたらどーすんだ。つーかよ、子どもに飯食わしてんのか?」 「……カップ麺を。」 指差した台所のテーブルに二つばかりカップ麺があった。 「こども食堂でもらいました。私もあれで生きてます。」 「それで親かよ。どう思う?自分のこと客観的に見てみろよ。」 女が啜り泣く。 「だって、……だって。」 「なんだよ?」 女が俺の腕を掴む 「リーチの瞬間、あの瞬間が……。」 「クソが。ガキは児相に送る。てめぇは病院だ。」 俺がそう言うと慎之助が顔色を変えた。 「ソープじゃないの?兄貴。」 小声で攻め立てられる。俺は舌打ちをして精一杯の悪態をついた。 「こんなババァじゃ抜けねーよ。」 言った瞬間、玄関の扉が開いた。 頭ボサホザの赤いランドセルを背負ったガキだった。女の子じゃなくて男の子だ。 「おじさんたち誰?母ちゃんどうしたの?」 女は、ガキの顔を見て過呼吸になる。 めんどくせぇ。 「慎之助、救急車呼べ。過呼吸だ。精神科のある佐久田総合病院を指名しろ。ギャンブル依存症だ。入院させるしかねえ。」 ガキが女に近づいてきた。 「母ちゃん。死んじゃうの?」 「死なねーから。てめぇは児相で待ってろ。」 救急車が来て女が運ばれた。 俺と慎之助はガキを児相に連れて行った。 「黙ってろよ。慎之助。」 「え。」 「最初で最後の、俺からお前への一生のお願いだ。」 「……はい。」 慎之助は、黙ってろって言われたら、黙っているタイプだ。
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