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ひき肉と、刻んだニラ、ニンニク、キャベツ。
ビニール手袋をはめてこねくり回している。この時ばかりは無だ。
量が多いから、慎之助が手伝ってくれるし、龍騎も手伝ってくれる。
「おやっさん、今年でいくつになったんすか?」
慎之助の質問に、俺は龍騎に視線を送った。
「兄貴ぃ?」
慎之助は俺に聞きたいらしいが。
「さあ。知らねーな。」
そんなの聞いたことなかった。
「え?」
龍騎は、ふっと笑う。
「おやっさんは、自分の歳を絶対に明かさない。いつまでも若くいたいんだとよ。」
知らなかった。そんな理由で誰も歳を知らないんだ。
「ま、今年で還暦だけどな。」
「なんだ。知ってんのかよ。」
「おやっさんの病院とか、免許更新とか誰が連れて行ってると思ってんだよ。」
龍騎はいつも、おやっさんの世話を焼いているし、組員をまとめている。所謂、若頭ってやつだ。
「銀次。塩分、控えてやってくれ。」
「はあ?」
「おやっさん。血圧が高いってよ、医者に言われてた。」
「もうおせぇよ。塩振っちまったから。」
「きょうはチートDAYにするか。誕生日だ。」
これがヤクザの会話じゃなかったら。
とっても仲良しな家族だったら。
そんな幻想を最近、思い浮かべるようになった。
「兄貴ぃ。餃子ってどうやって包むんすか?」
餃子の皮の袋を開けながら慎之助が興味津々に聞いてきた。
「テキトー。」
「え?」
「テキトー。」
俺はいつも適当に餃子を包んできたのだ。
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