にぎりめし

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栄江に言われるまま飯を握る。 力は込めるな。形を整える程度。硬く握ると「ライスボールじゃなくておにぎりだから」と怒られる。 寺で働くようになってだいたい半月。 こども食堂は土日祝日と学校の振替休日。 初めはガキの扱いに戸惑った。飯についてはちょっとでも気に入らないと栄江の作ったもんを食わない奴もいてムカついたこともあったが、それがガキだと諦めることを覚えた。 なぜだか知らねーが、気を遣って配膳や片付けを手伝ってくれるガキもいる。家でもやってるんだろうなって、想像した。 「銀次ぃ。」 ガキに呼び捨てされても仕方がないと諦める。 「あ?」 「美味いこれ。食う?」 俺が作った唐揚げだった。 「俺は後で食うから、お前が食え。」 「おばちゃん作ったの?銀次作ったの?」 「俺。」 「バチボコうまいじゃん。」 「ありがとう。残すなよ。」 栄江から合格をもらえないとガキに食わせられない。唐揚げは、初日で合格だった。 でも、にぎりめしは、合格がもらえない。 俺は、毎朝、にぎりめしを作っては栄江に食ってもらっている。栄江のと、俺のを比べると違いすぎて凹んだ。 どうしても、うまくいかない。 一生、にぎりめしの合格は出ないんじゃないか。
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