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それから1ヶ月。12月1日。
観音堂にクリスマスツリーが置かれた。
寺なのになぜ?
おやっさんと龍騎が見覚えのあるガキを登福寺に連れてきた。
俺が児相に送ったガキだ。少し太った。健康的になったというべきか。
「銀次ぃ。ちゃんとやってるか?」
寺務所でおやっさんにそう言われた。
「はい。」
「コイツになんか食わしてやってくれ。児相に帰す前にな。きょう、母ちゃんと面会だったんだよ。」
なるほど、そういうことか。
でも、食わせるもんが…。
「銀ちゃん。」
栄江に手招きされた。
栄江が炊飯ジャーの蓋を開ける。
「おにぎり2個分ある。」
「え。」
「そろそろ、合格だと思っていた頃でした。」
「まじ?」
「作って。」
「はい。」
俺は大事ににぎりめしを作った。
ガキの前に出す。
「食え。帰る前に腹ごしらえしてけ。」
おやっさんがそう言うと、ガキがにぎりめしを齧った。
「……うめぇ。」
そう言って笑った顔は、一生忘れないってそう思った。
〈了〉20230708「銀次とにぎりめし」
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