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「銀次の出所を祝って…。」
龍騎がそう言うと、食堂に集まった組員が、酒の入ったグラスを高々と上げた。
「乾杯。」
「おめでとうございます。」
口々にみんなそう言ったかと思うと、俺が作った飯を黙々と食い始め、誰が言い出したかわからないが、よその組のもんがウチのシマに性風俗店を出そうとしているって言う話が食堂に飛び交った。
俺は黙って、自分が炊いた白米を口に運んだ。
昼間食ったにぎりめしの方が粒が立ってた。握った飯のはずなのに。そもそも米が違うんだろうか。水加減の問題?炊飯ジャーの性能?
味噌汁も啜る。だしの素と味噌の加減は間違えてないが、菩薩が作った味噌汁より劣る。麹味噌だし、そこそこ旨いけど、何か違う。
俺が作ってる飯って旨くねーのかな。
それとも、菩薩の飯が美味すぎたのか。
「銀次ぃー。」
俺の横に座るおやっさんが、唐揚げを頬張りながら俺を見た。
「みんな、てめぇの飯を待ってたんだぜ。見てみろ。」
テーブルを囲む組員は、飯を米粒一つ残さず食っている。味の感想なんか言わないけど。
「おかえり。銀次。」
俺の居場所は、やっぱりここか。
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