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「返せ! 返せ! 勇二を返せ!」
必死に抵抗してくる修一の手を振りほどきながらオレは窓を開けると手にしていたスマホを外へと投げ飛ばした。
「いい加減に目を覚ましてくれ! オレが勇二だ。お前のたった一人の弟だ。頼むからもう鏡の中の自分に話しかけないでくれ」
「……認めない。絶対に認めない。認められるわけない!」
修一はそう言ってオレの顔を睨みつけるとオレの首を両手で掴んだ。
「修一……。や、やめろ」
「お前なんかいらないんだよ。お前なんか!」
首が絞まって苦しい。
オレは必死に修一の手を掴んだ。
だけど力強く掴まれていて外せない。
「……苦しい。……修一、やめて、くれ」
だんだんと意識が遠のいていく気がした。
そして、もう駄目だと思った時、それが目に入った。
オレはかすれた声で言った。
「……修一、窓、勇二、が見て、る」
オレの言葉を聞いた修一は窓の方へ視線を映した。
窓には修一がオレの首を絞めている姿が映っていた。
「勇二……」
一瞬、修一の力が弱まった。
オレはその瞬間に修一の手を強く握り、思い切り捻った。
「痛え!」
オレの首から放された修一の手。
だけどすぐにまたその手が伸びてくる。
「来るな!」
オレは叫んで、修一を蹴り飛ばした。
オレの右足が当たった修一の体は後ろへと跳ね飛ばされた。
修一の後ろには大きく口を開けた窓があった。
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