だい6ぶ・よいしょ

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と中で鬼島は、ちょっと電話するって、また出て行っちゃった。イソギの用事じゃなかったらいいのにな。 ずっと鬼島を見てたから、肩と首が痛くなってきた。しょうがなく、反たいに寝がえりする。 上にむくと苦しくてセキが出るから、かべの方にむくしかない。 つまんない。せっかく好きな人といっしょにいても、しゃべれないし、見えない。 何でカゼなんかひいちゃったんだろう。 動いても、動かなくても、しんどいし、何もできない。 ノドもかわいたけど、鬼島が買ってきてくれたオレンジジュースはベッドの下にある。飲むために起き上がるのもしんどい。 タオルにくるんだ保冷ざいもジャマだった。 鬼島は、すぐに戻ってきた。 おれの背中の方に来たのが、足音で分かる。 何かなって思ってたら、後ろにいっしょに寝てきて、 「ふー。ちょっと休憩」 って言いながら、ギューッてされた。 おれは背中に汗をかいて、ぬれてるのに。青いシャツがこん色のシミになっちゃいそうなのも気にせず、ひっ付いてくる。 鬼島の腕は、シャツのそでを下ろして、入れ墨をかくしてあった。 「しごと?」 かべの方をむいたまま聞いた。 「うん。まあね」 「行かないと、ダメ?」 鬼島の指に手を入れて、恋人つなぎでにぎる。行かないでって祈った。 「ううん。仕事の関係だけど、組との約束守ってくれなかった人がいて。大人なんだし、ちゃんとしてくださいねってお願いしてただけ」 説明しながら、手をにぎり返してくれた。 鬼島が言うのは、説とく力があると思う。鬼島は、ちゃんと約束を守る大人だから。 『……痛いよね、俺、恐かったよね。ごめんね。もうしないよ、約束する』 前に、ちょうど今してるのと同じポーズでそう言われた時から、約束通り1回も、おれをなぐってない。 おれも、約束を守れる大人にならなきゃ。
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