ロボットペット『ROBET(ロべット)』

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「ミーちゃん、こっちおいで」  母は目の前にいる小型のロボットに向かって名前を呼ぶ。  身長は50センチほどの二頭身のロボット。可愛らしいお目々をパチパチさせ、ペンギンのような平たい手をパタパタさせている。  あれからすぐにROBETを予約し、私の休みの日に合わせて母の家にROBETが届くようにした。最初は今まで見たことのない容姿の物体に戸惑い距離をとっていた母だが、私が設定している間に慣れたのか今はROBETの近くにいる。  ROBET専用のアプリを母のスマホにインストールし、設定を行った。名前は母が飼っていた愛猫と同じ名前にし、瞳の色、これからROBETが住む家の間取りなどを登録した。    母がROBETの名前を呼ぶと、ROBETは瞳の色を変え、両手を上下にパタパタさせ、母の元へと歩み寄った。母はその姿を見て、優しい視線をROBETに送った。両手で持ち、ROBETを抱く。ホームページに書かれていた通り、幸せそうな母の様子はオキシトシンが分泌されているかのようだった。 「暖かいわね。湯たんぽとかにもなりそう」 「もうそろそろ冬だし、ちょうどいいかもね」  ROBETの温もりを感じながら私と喋る。ここ最近は元気のなかった母だが、冗談を言えるほどの元気を見せてくれたみたいで何よりだった。ROBETもまたセンサーで抱かれたことを察知したのか瞳をパチパチさせ、喜んでいる様子だ。    あれからROBETについて調べてみたが、かなりの高性能だということがわかった。  人肌のような温もりを持っていること、話をかけたり、触られたりするとリアクションしてくれると言ったペットのような基本性能はもちろんのことその他にも色々な機能が備わっている。  一つ目は登録した住宅に応じて色々なことをしてくれる。玄関を登録すれば主人が帰ってきた時に迎えにきてくれるし、充電スポットを登録すれば充電が残り少なくなると自らスポットに赴いてくれる。また、ROBETの足の部分が円形の土台に車輪がついている形になっており、これによって自動で床を掃除してくれるとのことだった。  二つ目はAI音声認識サービスが備わっており、エアコンやテレビのオンオフ、聴きたい音楽の提供、目覚まし等の主人のサポートを行ってくれる。  最後は防犯機能だ。ROBETの頭の上には小型カメラが搭載されており、一定のタイミングで写真を撮ってくれるとのことだ。これにより、思い出を作ったり、防犯になるとのこと。  様子を見ている限り、母はROBETを大層気に入っているみたいだった。初日でこれほどまでに喜んでくれているのならば、7日間の無料トライアルの後にも契約を継続するというだろう。  私は母とROBETの二人の様子を微笑ましく思った。
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